クロスリンク特許事務所(銀座・東銀座・新橋)のヤマダです。

はじめに

最近、人気商品の売上が急に落ちてきた。よく調べてみたら某国からその商品にそっくりの模倣品が日本に流入していた! こんなことがあったら困りますよね。

今日は、模倣品・海賊版対策として有効な「税関による水際取締り」についてお話しします。

税関による水際取締りとは

模倣品や海賊版が国境を越えて日本国内に上陸する直前(水際)で取り締まってくれるのが、税関による水際取締りです。

水際取締りには、

● 違法な輸入を取り締まる「輸入取締り」
● 違法な輸出を取り締まる「輸出取締り」

の2つがあります。今回お話しするのは模倣品・海賊版対策に有効な「輸入取締り」の方です。

輸入取締りの対象は輸入禁制品

輸入取締りの対象となるのは「輸入禁制品」です。輸入禁制品は「輸入してはならない貨物」として法律に定められています(*1)。法律に違反して禁制品を輸入すると、懲役・罰金の対象となります。

輸入禁制品としては、例えば以下のものが定められています。

● 麻薬、覚醒剤
● 危険ドラッグ
● 拳銃、機関銃
● 爆発物
● 火薬類
● 化学兵器の原料物質
● 病原体
● 偽造貨幣、偽造紙幣
● 猥褻物品
● 児童ポルノ
● 知的財産権を侵害する物品

麻薬や拳銃、偽造紙幣、猥褻物品等は、社会に悪影響を及ぼす反社会的な物品です。知的財産権侵害物品はこれらの物品と同様に取り扱われ、厳しく輸入が制限されているということです。

知的財産権を侵害する物品には、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権等を侵害する物品や不正競争防止法の規定に違反する物品等が含まれます。

輸入取締り(通関手続き)の流れ

輸入されて日本に入ってくる貨物については書類審査と貨物検査が行われます(通関手続)。ここで、知的財産権を侵害している疑いがある貨物(疑義貨物)が発見された場合には、疑義貨物が実際に知的財産権を侵害しているか否かが判断されます(認定手続)。疑義貨物が侵害品と判断された場合には、その貨物は没取され、廃棄され、或いは積戻しされます。

疑義貨物の取締りは、

● 知的財産権の権利者からの申立て
● 税関職員の職権

のいずれかによって行われます。但し、職権による取締りは、商標権侵害物品のように一見して侵害品であることが明らかでないと行われません。特許権侵害物品のような侵害品か否かの判断が難しい貨物については、権利者から申立てをして取り締まってもらうことが必要です。

輸入取締りの効果(メリット)

輸入取締りには以下の効果(メリット)があります(*2)。

(1)手続きが迅速

輸入差止めを申し立ててから1ヶ月程度で受理か不受理か、が判断されます。

知的財産権の侵害品に対しては、税関に輸入差止めを申し立てる以外に、裁判(民事訴訟)で差止めを訴えることもできます。しかし、知的財産権に関する民事訴訟の場合、第一審(地方裁判所における裁判)の審理期間は平均で15.7ヶ月です(平成24年のデータ)。

これと比べると、税関での輸入差止め手続きは、かなり迅速と言えるでしょう。

(2)費用が安い

税関に輸入差止めを申し立てた場合、少なくとも税関に手数料を支払う必要はありません。なんとタダです。

仮に、申立て書類の作成を専門家に依頼したとしても、裁判と比べれば、提出書類は格段に少なく、作成期間も短くて済みますから、費用を低く抑えることができるのです。

(3)侵害を防ぐ効果が高い

模倣品や海賊版が国境を越えて日本国内に上陸する前に処置することができます。一旦、日本国内に上陸し、拡散してしまった模倣品や海賊品を完全に摘発するのは困難です。そのような意味で、税関による輸入差止めは、川上の段階で模倣品や海賊版の侵入を防ぐことができ、侵害の防止効果が高いのです。

税関に輸入取締りをしてもらうための手続き

税関に輸入差止めの申立てを受理してもらうためには、

● あなたが知的財産権(特許権、商標権等)の権利者であること
● 知的財産権の内容に根拠があること
● 侵害の事実があること
● 侵害の事実が疎明されていること
● 税関職員が模倣品や海賊品を識別可能であること

が条件となっています。従って、これらの事項を裏付けるために、以下の書類を提出する必要があります(*3)。

(1)輸入差止申立書

輸入差止めをする申立人、申立ての対象等を明らかにするために、税関所定の様式の輸入差止申立書を提出します(*4)。

輸入差止申立書には、例えば以下の事項を記載します。

● 輸入差止申立ての根拠となる権利の内容
● 侵害物品の物品名
● その物品が侵害物品である理由
● 真正品と侵害物品の識別ポイント

(2)登録原簿の謄本及び公報

知的財産権が実際に登録され、権利が存続していることを明らかにするため、特許原簿や意匠登録原簿などの謄本を提出します。これらは不動産の登記簿謄本のようなもので、特許庁に申請して取り寄せます(*5)。

また、知的財産権の内容(例えば、特許発明や登録意匠の具体的な内容)を明らかにするため、特許公報や意匠登録公報などを提出します。特許公報や意匠登録公報は、工業所有権情報・研修館のインターネットサービス「特許情報プラットフォーム(J-Platpat)」からダウンロードすることができます(*6)。

(3)侵害の事実を疎明するための資料

侵害物品が特許権を侵害している理由を明らかにするために、疎明資料を提出します。本来、「疎明」とは、一応確からしいと推測できる程度の証拠を出すことを意味します。しかし、輸入取締りの手続きにおいては、「証明」レベル(確信が得られる程度)の証拠を出すことが求められます。

例えば、侵害物品を特許発明の要件と対比して、侵害物品が確かに特許発明の要件を満たしていることを説明した書類などが必要です。

(4)侵害物品と真正品の識別ポイントを示す資料

税関職員が侵害物品を容易に識別可能とするために、侵害物品と真正品を識別することができるポイントを図解したもの、その他、識別方法などを示した等の資料を提出します。

例えば、侵害物品には真正品なら付いているはずの固有のタグが付いていない等の識別ポイントを書類で示します。

まとめ

税関による輸入取締りは、比較的、低コストで簡易迅速に、模倣品や海賊品が日本国内に入ってくる事態を防止することができる制度です。資金力に乏しい中小企業や個人事業主にとっても有効な侵害防止策となり得るので、うまく使っていきましょう。

参考サイト

(*1)関税法第69条の11(輸入してはならない貨物)

(*2)日本の水際取締の知財紛争解決手段としての活用(パテント2013 Vol.66 No.12)

(*3)利別申立ての具体的手順(特許権)<税関>

(*4)各種様式(税関)

(*5)特許登録原簿の閲覧及び交付請求(特許庁)

(*6)特許情報プラットフォーム(J-Platpat)

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