弁理士がどんな仕事をしているのか知らない方が
ほとんどではないでしょうか。

今日は、弁理士の大事な仕事の一つである
「クレームドラフティング」についてお話しします。

★ 一般向け(知財のことをあまり知らない方でも楽しめる記事です)

 

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「特許はハイテクばかりじゃない」

特許というと、スマートフォンやハイブリッドカーのような
ハイテクなものを想像してしまいがちです。

でも、そんなことはありません。
一見、簡単そうに見えるローテクにも特許権はきちんと与えられています。

4月10日にも、ローテク特許に関する裁判の判決がありました。
特許権の対象は、なんと「切り餅」!

高橋英樹のCMでお馴染み越後製菓(業界2位)が、
「さとぉ~の切り餅ぃ~♪」の佐藤食品工業(業界1位)を、
「切り餅特許」の特許権侵害で訴えたのです。

東京地裁は、越後製菓の主張を認め、
佐藤食品に8億円近い損害賠償金を支払うよう命ずる判決を出しました。

 

「クレームドラフティングとは」

特許権侵害の裁判では「特許請求の範囲」という書類の文章に基づいて
特許権を侵害しているかどうかが判断されます。

「特許請求の範囲」は、特許を申請する際に提出する書類で、
特許権の対象となる発明の内容を文章で記載したものです。
この文章(クレーム)を書く作業が「クレームドラフティング」です。

弁理士は、発明者から発明の内容を聞き取り、
その内容を理解した上で文章(クレーム)に起こします。
明確に、簡潔に、そして従来の技術と区別できるように。

クレームの書き方が悪いと、特許権を取れなかったり、
特許権の範囲が狭くなったりすることがあります。

だからこそ、「クレームドラフティング」は、
弁理士の腕の見せ所とも言えるわけです。

 

「勝負の分かれ目となったのはクレームの解釈」

越後製菓の「切り餅特許」は、下の図のように、
切り餅の横の面に切込みを入れるというシンプルなものでした。

切り餅_焼く前の状態edit

※ 図面は特許411382号公報より引用。説明を加筆。

 

横の面に切り込みが入っていることで、
焼いている時にお餅の中身が、どばっと流れ出ず、
下の図のように、キレイに焼けるわけです。

切り餅_焼いた状態edit
※ 図面は特許411382号公報より引用。説明を加筆。

 

そして、越後製菓の「切り餅特許」のクレームには、
「切り餅の上の面とか下の面ではなく、横の面に切り込みを入れる」
という内容が記載されていました。
(実際のクレームは、もっと難しい言葉で記載されています)

これに対し、佐藤食品の切り餅は、下の図のように、
横の面だけではなく、上の面や下の面にも切り込みが入ったものでした。

切り餅_サトウ製品edit
※ 図面は平成24年(ワ)第12351号判決の別紙より引用。説明を加筆。

 

佐藤食品は、

・クレームには「上の面とか下の面ではなく、横の面に」と書いてある。
・うちの切り餅は、上の面や下の面にも切り込みを入れているから、
クレームに書いてある切り餅とは違う(特許権侵害ではない)。

というニュアンスの主張をしたのですが、越後製菓は、

・「上の面とか下の面ではなく」は、「横の面」を修飾する記載にすぎない。
・だから、上の面や下の面に切り込みが入っていようがいまいが、
横の面に切り込みが入っている限り、クレームに書いてある切り餅と
同じものである(特許権侵害)。

というニュアンスの反論をし、最終的には越後製菓の言い分が通る形で判決が出ました。

この例でもわかるように、人は自分にとって
都合がいいように文章を読むものです。

ですから、できる限り解釈の余地が少なく、
誰が読んでも同じ意味に解釈してもらえるような
クレームにしておくことが理想的です。

そのためには、

信頼できる弁理士にクレーム作成を依頼すること
弁理士に発明の内容や取りたい特許のイメージを具体的に説明すること
弁理士が作ったクレームがわかりにくいときは、
納得できるまで説明してもらうこと

などが大事です。

 

今日のポイント

1.クレームの書き方が悪いと、特許権の範囲が狭くなることがある。
2.できる限り解釈の余地が少ないクレームにしておくことが理想的。
3.信頼できる弁理士にクレーム作成を依頼することが大事。

 

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