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ピコ太郎とは全く無関係の会社が商標「PPAP」を出願している件(その3)<コラム#78>

はじめに

前々回、前回と続いてきた、第三者による商標「PPAP」出願問題。

 

今回が最終回です。

万が一、特許庁がB社の商標「PPAP」を問題なしとして登録してしまった場合。
果たしてピコ太郎は「PPAP」を歌えるのでしょうか?

今日は、ピコ太郎の今後を予想してみます。

 

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もしB社が商標「PPAP」の商標権を取ってしまったら…

特許庁がB社の商標「PPAP」を問題なしとして登録してしまった場合、B社が出願した商標「PPAP」は登録され、「PPAP」の商標権はB社の手に落ちます。

商標権を持ったB社は、商標「PPAP」を独占的に使用することができます。
一方、他の人が許可なく商標「PPAP」または「PPAP」に似た商標を使うとB社の商標権を侵害することになるおそれがあります。

他の人がB社の商標権を侵害した場合、B社は、

● 商標の使用を差し止める
● 商標を使ったことに対して損害賠償金を請求する

という行動に出る可能性があるのです。

B社の代表U氏が、

「あくまで権利は自分にあるのでピコ太郎が許可なくPPAPを歌うと損害賠償請求の対象になる」

と言っているのはそういう意味です。

 

引用元:
netgeek

 

商標権は行使することができる商品・サービスの範囲が決まっている

但し、商標権はその効力が及ぶ商品・サービスの範囲が決められています。他の人が、

● 商標権の権利書に記載された商品・サービスと同じ商品・サービス
● 商標権の権利書に記載された商品・サービスと似ている商品・サービス

の範囲で商標「PPAP」を使った場合にしか商標権を行使することができません。

皆さん、商標ばかりを気にしますが、商標だけでなく、権利書にどんな商品・サービスが記載されているかが重要なのです。

 

B社はまだ商標権を取っていませんので、権利書の基になる出願書類を確認しました。
そうすると、

● 第41類 音楽の演奏

というサービスが記載されています。

U氏が「PPAPを歌うと損害賠償請求」と言っている根拠は、出願書類に「音楽の演奏」というサービスが記載されているからだと考えられます。

 

ピコ太郎が「PPAP」を歌ったら、B社の商標権を侵害することになるか?

では、ピコ太郎が「PPAP」を歌ったら、B社の商標権を侵害することになるんでしょうか?

私は商標権の侵害にはならない、と考えています。
理由は以下のとおりです。

 

商標は、

● 自分の商品・サービスを他人の商品・サービスと区別する(識別機能)
● その商品・サービスを誰が提供しているかを示す(出所表示機能)

ための標識だと言われています。

しかし、ピコ太郎が歌っている時の「PPAP」という言葉は歌詞にすぎず、曲の内容を表しているだけです。
この時の「PPAP」は「音楽の演奏」というサービスにおいて誰かの演奏と区別する役割を果たしているわけでもないし、誰がその音楽を演奏しているかを示しているものでもありません。
要するに、ピコ太郎が歌っている時の「PPAP」は識別機能や出所表示機能を発揮しておらず、商標として機能していないのです。

このため、私はピコ太郎が「PPAP」を歌っても、B社の商標権を侵害することにはならない、と考えています。

 

過去に「UNDER TEH SUN」事件という裁判がありました。

商標「UNDER TEH SUN」(商品は「レコード」)について商標権を持つ商標権者が、井上陽水さんのCDアルバム「UNDER TEH SUN」を製造販売したフォーライフレコードを訴えた裁判です。

この裁判では、CDジャケットに表記された「UNDER TEH SUN」の文字は、

● アルバムのタイトルであり、CDの製造販売元を表示するものではない
● 識別機能としての機能を果たしていない

として、フォーライフレコードの商標権侵害を否定しています。

 

もしB社が商標「PIKOTARO」の商標権を取ってしまったら…

とりあえず、B社の商標「PPAP」が登録されても、ピコ太郎は「PPAP」を歌えそうです。

ですが、まだまだ安心はできません。

B社は商標「PIKOTARO」も出願しているからです。
しかも、この出願書類にも「第41類 音楽の演奏」が記載されています。

「PIKOTARO」は「ピコ太郎」と類似の商標です。

そして、「PIKOTARO」は、

● 他の演奏者の音楽から「ピコ太郎」の音楽を区別する役割を果たす(識別機能)
● 音楽の演奏者が「ピコ太郎」であることを示す(出所表示機能)

ため、「PPAP」とは異なり、商標として機能する可能性があるのです。

 

B社が商標「PIKOTARO」を出願したのは2016年10月21日です。
エイベックスはB社より1週間早く、2016年10月14日に商標「ピコ太郎」を出願しています。
が、しかし…。
なんと、エイベックスは「第41類 音楽の演奏」を指定していないのです…。

そうすると、B社は「第41類 音楽の演奏」について、商標「PIKOTARO」の登録を受けられる可能性があるということです。

 

ピコ太郎が「ピコ太郎」を名乗って歌ったら、B社の商標権を侵害することになるか?

さて、B社が商標「PIKOTARO」の商標権を手中に収めた場合に、ピコ太郎が「ピコ太郎」を名乗って歌を歌ったら、B社の商標権を侵害することになるんでしょうか?

 

私は商標権の侵害にはならない、と考えています。

理由は以下のとおりです。

 

B社が商標「PIKOTARO」を出願した時点で、既に「ピコ太郎」が「音楽の演奏」に関して有名になっていた場合には、ピコ太郎に「先使用権」という権利が発生します。

先使用権があるとB社の商標権に対抗することができ、たとえB社が商標「PIKOTARO」について商標権を持っていたとしても、ピコ太郎は自分の芸名「ピコ太郎」を継続して使用することができるのです。

 

ジャスティン・ビーバーが「PPAP」のYoutube動画について、「My favorite video on the internet」とリツイートしたのが2016年9月27日。
これをトリガーとして情報はあっという間に世界に拡散され、Youtube動画の再生回数は数千万回にも及んでいます。
そうすると、B社が商標「PIKOTARO」を出願した2016年10月21日には、「ピコ太郎」の名前は「音楽の演奏」に関して世界的に著名になっていて、ピコ太郎には先使用権が発生していると考えられます。

このため、私はピコ太郎が「ピコ太郎」を名乗って歌っても、B社の商標権を侵害することにはならない、と考えているのです。

 

まとめ

以上説明したように、私は仮にB社が商標権を取ってもピコ太郎は「PPAP」を歌い続けられると考えています。

でもこの事案は、ピコ太郎や「PPAP」が世界的に著名であるという点で非常に特殊な事例です。

皆さんの商標について、こううまくはいくとは思えません。
早い者勝ちの原則を一番に考え、商品名やサービス名、ロゴマークなどを公開する前に商標の出願をしておくことが大事です。

また、商標は「商標」と「商品・サービス」がセットです。
「商品・サービス」の観点からも検討するようにしてください。

 

おまけ

ちなみに、SMAPの商標権についても調べてみました。

商標「SMAP」は「第41類 演芸の上演、演劇の演出又は上演、音楽の演奏」について登録されていました。
ジャニーズ事務所、さすがです(笑)

そして、商標「SMAP」の商標権は平成37年5月31日まで残っていました。
ちょっと寂しい感じがしますね…。

 

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