山田 龍也
代表弁理士
得意分野
●特許(機械分野<形状や構造に関するアイデア>、化学分野<材料や素材に関するアイデア>、特にローテク発明)
●商標登録、ネーミング支援(会社名、商品名、キャッチフレーズなど)
●中小企業支援
ヒストリー
自分の歴史を振り返ってみると、随所随所で今の活動に繋がる出会いがあったことに気付きます。
神奈川県立柏陽高等学校
キーワード: 化学、ものづくり
高校時代は理科部に所属。小学生の頃から化学に興味があり、化学班員として活動をしていました。化学班の主な活動は学校裏を流れる「いたち川」の水質検査を行うこと。ここで初めて本格的な実験器具に触れ、化学の基礎を学びました。
この理科部。オタクっぽい名前には似つかわしくなく、非常にアクティブな部でした。山梨県の清里までペルセウス流星群の観測に出かけたり、キャンプを張ってアマチュア無線の野外運用を行ったり。私も「電話級(現・第4級)アマチュア無線技士」の資格を持っています。
無線用アンテナや風力発電機、太陽熱オーブン、プラネタリウムなど、何でも自作する気風。理科部での活動が私にものづくりの楽しさを教えてくれました。
日本大学 文理学部 化学科(有機化学専攻)
キーワード:有機化学、情報発信、コンテンツづくり
大学は化学科に進学、有機化学を専攻しました。
4年時には、外部研究生として東京工業大学大学院生命理工学研究科・橋本研究室に出向。この研究室は糖を使った生理活性物質の化学合成について研究しており、私も「2-O-アセチル-D-グルコースの合成とそのグリコシル化反応」というテーマで卒業研究を行いました。
グルコース(ブドウ糖)の一つの水酸基がアセチル基に置き換えられただけの極めてシンプルな化合物。その合成には実に7工程を要しました。ものづくりの奥深さ、有機化学の面白さを知れたのは貴重な体験だったと思っています。
大学時代には放送研究会に所属。銀座インズにあった日立のオーディオブランド「Lo-D」のショールームで自分が企画した番組のDJをしたり、シャープの市ヶ谷ショールームでイベントのMCをしたり、ラジオドラマを作ったり。そんな活動をしていました。
自らコンテンツを作り、人前で話し、何かを伝える。これらの経験がブログやSNSでの情報発信、セミナーのコンテンツづくり、セミナー講師としての話すスキルに繋がっていると感じます。
三協化学株式会社(現・富士フイルムワコーケミカル株式会社)
キーワード:現場でのものづくり経験
大学を卒業後、写真用有機化学薬品を製造販売する富士フイルム系列の化学メーカーに就職しました。
「さぁ、研究開発だ!」と期待に胸を膨らませていたのですが、待っていたのは工場出向の日々。ヘマをやっては現場の工員さんたちに怒鳴られ、「研究の人たちはいいよね。仕事ができなくても高い給料をもらえて。」と嫌味を言われ…。
屈辱的でしたよ。それでも歯噛みしながら必死で現場の仕事を覚えました。すると、徐々に現場の人たちが私のことを信頼してくれるようになってきたんです。「研究の人たちが皆、ヤマダ君みたいに現場のことをちゃんとわかって製造処方を作ってくれるといいんだけどね。」と言ってもらえた時は嬉しかったですね。現場でのものづくり経験は特許の仕事をする際に発明者に寄り添えるという意味で自分の強みになっていると感じます。
ここでは生産技術研究所で4年、合成化学研究所で2年。6年あまり研究開発に携わりました。
在籍中の代表的な研究テーマは「銀塩写真用シアンカプラーの合成および量産化」。「シアンカプラー」は現像薬と反応するとシアン(青)色の色素に変化する色素の元です。私が研究していた素材は富士フイルムのリバーサルフィルム「フジクローム PROVIA」に採用されました。
渡邉一平国際特許事務所(現・東名国際特許事務所 )
キーワード:特許
化学メーカーを退職した後、化学系の特許事務所に転職しました。
技術者として際立った成果を上げることができず自分に限界を感じ始めた頃、将来、技術者として挫折した時、自分に何ができるのか、どうすれば食べていけるのかを考えるようになりました。その中でたどり着いたのが特許の仕事でした。やっぱり技術やものづくりに関わっていたい。でもそれだけでは何かが足りない。ならば、足りない部分を別の要素で補ってみよう。技術者としての経験や知識を活かし、そこに法律的な知識と文章力を加える。そんな発想で特許の世界に飛び込んだわけです。
化学メーカー時代には全く特許に関わっておらず、ゼロからのスタートでした。しかし、発明者の話を聞き、その技術内容を文章化し、特許を申請するという仕事は思いの外、自分と相性が良い仕事でしたね。元々、文章を書くことや物事を論理的に考えることが好きだったからかもしれません。
この事務所のメインクライアントは日本ガイシ。セラミック製品の分野ではトップメーカーです。この時期には、NAS電池、ディーゼル・パティキュレート・フィルター(DPF)、セラミック膜フィルター等の特許申請や拒絶対応(中間処理)を担当していました。
正林国際特許事務所(現・正林国際特許商標事務所 )
特許事務所に移って4年ほど経った頃、体調を崩してしまい、事務所を退職。弁理士試験の予備校やゼミでお世話になっていた先生の事務所で8ヶ月程、アルバイト的に働かせてもらいました。
この事務所では身体の状態を見ながら、細々と特許申請の仕事を続けていました。
渡邉一平国際特許事務所(現・ 東名国際特許事務所)
キーワード:機械系の発明(構造や形状に特徴があるアイデア)、ローテク発明
体調が回復してきたのを機に前勤務先の特許事務所に復帰しました。
復帰直後は樹脂やゴムなどの有機化学系の発明の特許申請や拒絶対応(中間処理)を担当していました。しかし、徐々に増えてきたのが紙おむつ、ティシュカートン(ティシュペーパーの箱)、トイレットロールなどの家庭紙に関する発明を特許申請する仕事でした。
化学系の発明は物質の化学構造や成分組成に特徴があるのに対し、家庭紙に関する発明は構造や形状に特徴があります。ジャンルとしては機械系の発明に属し、発明の捉え方や文書化の手法が化学系の発明とはかなり異なります。実際、化学系の特許事務所では機械系の発明を苦手という人も少なくありません。私はこの家庭紙系の発明に集中的に取り組むことによって、機械系の発明(構造や形状に特徴があるアイデア)の特許申請に関してかなり自信を持つことができました。
この時期に担当した案件で最も印象的だったのは、王子ネピアの「尿便分離型紙おむつ」に関する特許申請です。便の中に含まれる腸内酵素と尿が接触するとアンモニアが発生し、かぶれの原因になります。この課題を解決するために、おむつの中を前後2つのポケットに仕切ったのが尿便分離型紙おむつです。このアイデアで使っているのは不織布とゴムだけ。いわゆるローテク発明です。それにもかかわらず、今までにない非常にユニークな発想で課題を解決しています。
この尿便分離型紙おむつの基本発明の特許申請は私が担当し、見事、特許取得に成功しました(特許3919023「使い捨ておむつ」)。その後、この構造の紙おむつは「ネピア GENKI! ハイキャッチ」という商品名で発売され、2007年度のグッドデザイン賞を受賞しています(おむつ [nepia GENKI! ハイキャッチ Mサイズ – グッドデザイン賞])。
高度な技術や最先端の新素材を使わなくても、工夫とアイデアがあれば特許は取得することができる。こういう発明こそ特許を取得する価値があるし、サポートのしがいもある。この体験がローテク発明の面白さに目覚めるきっかけとなりました。
また、この事務所の在籍時に弁理士資格を取得しました(平成23年(2011年)弁理士登録)。
吉田・近藤特許事務所
キーワード:意匠登録
前勤務先で10年ほど勤務した後、秋葉原にある特許事務所に移りました。10数名規模の小規模な事務所です。
この事務所のメインクライアントの一つがキヤノン。言わずとしれた特許の巨人です。私はインクジェットプリンタ用の顔料インクに関する特許申請や拒絶対応(中間処理)を担当していました。知財戦略に長け、有能な知財部員を抱えた巨大企業の仕事を担当することができたのは良い経験になりました。
また、構造や形状に関する発明に携わった経験を活かして意匠登録の仕事に取り組むようになったのもこの頃です。医療用器具メーカー・大協精工の注射器やバイアル瓶の意匠登録申請を担当しました(例えば、意匠登録1522186「キャップ付き注射器」など)。構造や形状に特徴を有する製品に関し、特許の次善策として意匠登録が有益であることを実感しました。
クロスリンク特許事務所
キーワード:商標登録、ネーミング、中小企業支援
2015年(平成27年)1月1日にクロスリンク特許事務所を設立。独立開業を果たしました。
前勤務先で感じたのはしっかりとした知的財産部を持つ大企業に自分のサポートは不要、知財人材や知財の知識に乏しい中小企業に対してこそ自分の知識や経験が活かせるのではないかということでした。そこで、中小企業専門の特許事務所を設立、中小企業向けに特許申請の代行サービスを開始したわけです。
当所で特許申請を代理した、北海道函館市の中小企業・株式会社エスイーシーの「オイルゲル、これを用いた電子機器保護用の耐圧材料およびオイルゲル形成剤」は特許を取得(特許6162911)、令和元年度 北海道地方発明表彰で「文部科学大臣賞」を受賞(令和元年度北海道地方発明表彰受賞者一覧)、令和2年度全国発明表彰では「未来創造発明奨励賞」を受賞しました(令和2年度全国発明表彰 受賞者一覧)。
中小企業の方々と実際にやり取りをしてみてわかったのは企業のブランド力の重要性でした。「良い商品なのに売れない」というお悩みを解決するため、ブランドづくりに不可欠な商標登録申請の代行サービス、そして商標登録の一歩手前にある商品名のネーミングについてのアドバイスも行っています。
開業当初の2015年より日本弁理士会関東会 中小企業・ベンチャー支援委員会に所属し、弁理士会での中小企業支援活動も行っています。主な活動は知的財産初心者向けセミナーの企画運営。2020年1月29日に開催された知的財産セミナー2019では長野五輪シンボルマークデザイナー・篠塚正典氏とW講師として登壇しました。篠塚氏は商品のパッケージデザインについて、私は商品名のネーミングについて講義を行っています。