漆(うるし)は輪島塗などの伝統工芸にも使われる高級塗料です。しかし、乾きにくい、塗布できる素材が限られている等の課題もあり、扱いにくい素材でもありました。この課題を解決したのが「UV漆」です。この「UV漆」から商品開発のヒントを探ってみましょう。
漆塗りは漆の樹液を塗装したもの
漆塗りは木製・竹製の食器や家具に漆の木の樹液から得られる塗料を塗装したものです。
漆の樹液にはウルシオールという物質が含まれています。このウルシオールが酵素と酸素の働きで鎖状に繋がり、高分子を形成することで硬化するため、光沢のある塗工層が形成されるのです。
漆塗料は乾燥しにくく、塗れる素材が限られている
漆は美しい塗工層を形成することができるのですが、技術的な問題点が指摘されています。
- 塗装後の乾燥に時間がかかること
- 塗装の対象物が限られていること
です。
一つ目の問題は塗装後の乾燥に時間がかかることです。塗装が終わった後、平均15日程度の乾燥時間が必要です。
二つ目の問題は塗装対象の素材が限られることです。漆は木材や竹などの素材には比較的容易に塗ることができます。しかし、例えば金属やプラスチックなどの素材には馴染みにくく、塗ることが難しいのです。
UV漆はUV硬化型樹脂を加えて漆の問題を解決した
そんな漆塗りの問題を解決したのが紫外線硬化型漆塗料(UV漆塗料)です。特許も取得していました(現在は権利期間の満了により権利は消滅しています)。
特許2821110号「紫外線硬化型含漆合成樹脂塗料及び秒速乾燥法」
UV漆塗料は、漆塗料に紫外線硬化型樹脂(UV硬化型樹脂)を混合したものです。
UV硬化型樹脂は紫外線を照射すると紫外線のエネルギーにより液状の単量体(モノマー)が鎖状に繋がり高分子を形成し、硬化する樹脂です。接着剤やコーティング剤、ジェルネイル等にも使われています。
UV漆塗料は紫外線を照射すると1分程度で固まるので、従来の漆塗料と比べると大幅に乾燥時間を短縮することができます。
また、材料を選ばず何にでも塗膜を形成させることができるので、従来の漆塗料を塗ることができなかったプラスチックや金属の製品にも塗装を行うことができます。
「UV漆から学ぶ商品開発のヒント」のまとめ
漆塗料という伝統的な素材にUV硬化型樹脂のような現代の技術を組み合わせることで、使い勝手が良く、付加価値が高い商品を開発することができました。
漆塗料のような扱いにくい素材を現代の技術で蘇らせたということです。乾燥時間が短く、どんな素材にも塗れるとなれば、漆の活用範囲も広がるでしょう。漆製品がより身近なものとなることが期待されます。
昔ながらの素材、使い勝手の悪い商品でも現代の技術を組み合わせれば別の商品として生まれ変わる可能性があります。
問題点があるからと言って別の商品に乗り換えるのではなく、使える可能性がないか、問題点をクリアすることができないかを考えてみるのが、新商品開発のきっかけになると思いますよ。
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