「良いネーミング」の誤解。売れる名前には理由がある

売れるネーミングの科学:感覚を言語化し、無形資産を築く『名前』の設計図」と書かれたタイトル画像。中央には寸法線が引かれた立体的なブロックの図面が描かれ、下部には「『アート』から『サイエンス』へのパラダイムシフト」と記載されている

※アイキャッチ画像はAI(NotebookLM)で生成

「商品さえ良ければ、名前なんてどうでもいい」

あるいは、「ネーミングはセンスのある人が考えるもの」「かっこいい名前、おしゃれな響きを考えることがネーミングだ」と思っていませんか?

どちらも、もったいない誤解です。

今回は、多くの経営者・起業家が陥りがちな「ネーミングの誤解」を解きながら、売れる名前に共通する本質をお伝えします。

目次

ネーミングの本質は「体感を伝えること」

良いネーミングとは何か。一言で言うと、名前を聞いた瞬間に体験や感情をイメージさせるものです。

ほっかほっか亭」という名前を聞いたとき、あなたの頭に何が思い浮かびますか?
「お弁当屋さん」でしょうか?私は違うイメージです。

お弁当のふたを開けた瞬間に立ち上る湯気。ふっくらとした白ごはん。炊きたてのお米の香り。そういったイメージ。名前を聞いただけで一瞬にして広がる。これが良いネーミングの共通点です。

ほっかほっか亭の創業者は「温かいお弁当を届けたい」という原体験をそのまま名前にしたと語っています。だから説明しなくても伝わる。だから50年経っても色褪せない。

もう一つ、事例を挙げましょう。「ゴリラのひとつかみ」。足ケアの商品です。製品の機能や効果を一切説明していないにもかかわらず、「ゴリラの怪力でつかまれるくらい、強力にもんでくれるんだろうな…」というイメージが一瞬で伝わる。一度聞いたら絶対に忘れない。これが、ネーミングの力です。

お客さんが名前に触れてから判断するまで、0.5秒もかからないといいます。良い名前は、見た瞬間・聞いた瞬間に見込み客の脳内を占領することができます。逆に言えば、その一瞬を逃してしまうと、どんなに良い商品でも記憶に残らないんです。

ネーミングには2つの機能がある

ネーミングを「単なる名付け」だと思っていたら、かなり損をしています。ネーミングには、大きく分けて2つの機能があるんですよ。攻めの機能と守りの機能です。

攻め(売る)の機能は、商品の強みを一瞬で伝え、他社との差別化を図り、顧客の記憶に刻むこと。守り(育てる)の機能は、名前に良い体験・評判を蓄積し、ブランドという無形資産を育て、リピートの目印にすること。

商品名は、お客さまからの信用を貯めていく「器」です。デキの悪いネーミングはヒビの入った器と同じ。どんなに良い商品を作っても、器のデキが悪ければ信用は貯まらず、どんどん外に漏れていきます。

あなたのネーミングが「信用の器」として機能しているか、3つの視点で確認してみてください。

  • Customer(顧客):お客様の心に響くか?
  • Competitor(競合):他社の商品と間違えられないか?
  • Company(自社):自分たちの強みや思いを伝えられているか?

良いネーミングの3原則

良いネーミングには共通する性質があります。3原則としてまとめると、以下のとおりです。

原則1:感覚で伝える

商品の内容を「説明」するのではなく、得られる体験や感情を「イメージ」させる。「スーパークリーン」という食器用洗剤があったとします。機能はわかる。でも、誰の記憶にも残りません。

キュキュット」はどうでしょう。きれいになったお皿をこする音そのもの。圧倒的な洗浄力を「音」で表現しています。
感覚を表す比喩やたとえもいいです。説明よりずっと強く刺さる。「まるでこたつソックス」なんて名前を聞いたら、あの温かさが足先まで伝わってくる気がしませんか?

原則2:短く、リズミカルに

人の記憶に残りやすいのは3〜7音です。「キュキュット」は4音。「ガリガリ君」は6音。呼びやすいから、自然に口から出てくる。

中小企業はテレビCMをバンバン打てるわけではありません。口コミや紹介で広がる名前を考えることが大切です。「ゴリラのひとつかみ」。これを聞いたら誰かに話してみたくなりませんか? 

それが、広がる名前の力です。

原則3:「音」を設計する

意味よりも語感の面白さ。耳にした時に引っかかるフックを作る。

キュキュット」の「キュ」の繰り返しと、「ッ」で跳ねるリズムが心地よいです。

そして、今までこの世に存在しなかった造語であること。造語にすることで、他の誰も使っていない言葉になり、商標登録もしやすくなります。

ネーミングはアートではなく、サイエンスだ

「自分にはネーミングセンスがない。だから良い名前なんて思いつかない」

これは思い込みです。今すぐ捨てましょう。

ネーミングは、クリエイティブな才能がある人の専売特許ではありません。突然ビビッと閃くものでもないし、天から降ってくるものでもない。ネーミングは「アート」ではなく、「サイエンス(科学)」なんです。

売れる名前には再現性のある「理由」があります。公式に当てはめて考えれば、必ず答えにたどり着ける。センスがないのではなく、問題を解くための公式を知らないだけなんです。

多くの人がやりがちな失敗は、「おしゃれな名前にしたい」「商品内容をきちんと説明したい」というところから考え始めてしまうこと。そして悩んだ挙げ句、誰にも刺さらないキラキラネームをつけてしまう。

ネーミングを考えるとき、真っ先に問うべきはこれだけです。

「名前を聞いてから0.5秒で、何を思い浮かべさせるか?」

説明的ではなく、感覚的。これがネーミングの本質です。それを導くための公式が先ほど説明した3原則です。

最後に。「伝わる名前」と「守れる名前」を一緒に設計する

どれだけ良い名前でも、他の人に使われてしまったら意味がありません。名前を自分だけが使えるようにする仕組み、それが商標登録です。

でも、商標登録のことばかりを考えて、「良い名前を作る」というところが疎かになっている人がいます。

「伝わる名前」と「守れる名前」を、最初から一緒に設計する。そして、その名前を商標登録の条件を満たすように調整し、権利で守っていく。それが、私がネーミングや商標登録の仕事で最も大切にしていることです。

あなたの商品名・屋号について、プロの感想を聞いてみませんか?

ご自分で考えたネーミングがイケているかどうか、ネーミングのプロの見立てを聞いてみませんか?
ネーミングの方向性から商標登録の可能性まで、まずはお気軽にご相談ください。

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山田 龍也
この記事を書いた人
弁理士/ネームチェンジャー®/テキスト職人。ローテク特許/ネーミングから始める商標登録。専門誌「美容の経営プラン」で「守りと攻めのネーミング」を5ヶ月連載。経済産業省・中小企業庁「ふるさとデザインアカデミー」講師。樺沢紫苑セミナーコンペで3位入賞。全ては言語化から始まる。趣味はスイーツの食べ歩き。
売れるネーミングの科学:感覚を言語化し、無形資産を築く『名前』の設計図」と書かれたタイトル画像。中央には寸法線が引かれた立体的なブロックの図面が描かれ、下部には「『アート』から『サイエンス』へのパラダイムシフト」と記載されている

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