「来週までに新商品のネーミングを考えないといけない。でも自分にはネーミングセンスのかけらもない!どないしよー(汗)」
そんな声をよく聞きます。でも、ちょっと待ってください。そもそも「センス」って何ですか?
良いネーミングを作るのに、センスは必ずしも必要ありません。必要なのは、正しい知識とテクニックです。
はじめに。まずは「言葉遊び」から始めよう
こんなSNS投稿を見かけました。
美味しそうなビリヤニの写真に、ひとこと。「やにわにビリヤニ」。
思わずニヤニヤしてしまいますよね。これを投稿していたのはダイヤモンド社の副編集長・種岡さん。さすが言葉のプロです。
分析してみると、4音+4音の8音。ほどよい長さ。心地よいリズム。「~イ・ア・イ」と「~イ・ア・イ」で母音が揃っていて、韻を踏んでいる。
「ビリヤニ」という日本人にはなじみの薄い料理名も、「やにわに」という日本語と組み合わさることで、不思議と親近感が湧いてきます。
常日頃からこういう言葉遊びをすることで、徐々に「ワードセンス」、「ネーミングセンス」が磨かれていくんです。
日常的に言葉と触れ合う。真面目に考えすぎず、言葉で遊んでみる。そうすることで、自然に言葉が出てくるようになります。ネーミングが苦手と感じる人は、まずは言葉遊びの感覚から始めてみましょう。
さて、「ワードセンス」や「ネーミングセンス」は徐々に鍛えることにして、センスに頼らなくても良い名前を作れるテクニックも紹介します。7つの型に整理しました。
テクニック1:音・韻・語呂から作る
多くの人はネーミングを「意味」から考え始めます。「どんな商品か」「どんな機能があるか」「どれだけ高性能なのか?」。
でも、そのやり方が、説明的で、つまらない名前を生む原因です。
ネーミングは「意味」からではなく、「音」から作りましょう!
ラップの歌詞は韻を踏んでいますよね。音を工夫しているから記憶に残りやすいんです。だから、商品名などのネーミングも音から作ると印象的なものができるということです。
たとえば、洋風居酒屋「ベルサイユの豚」は「ベルサイユの薔薇」から語感を拝借。炭焼ステーキ「BEEF IMPACT」は競走馬「ディープインパクト」になぞらえて。食用鱒「頂鱒(いただきます)」は挨拶の「いただきます!」との語呂合わせ。
ダジャレじゃないかって?
そうです、ダジャレです。でも、くだらないと笑っている、そこのあなた!実際、これより良いネーミングをできていますか?
こっちは、ちゃんと話題になって、メディアに取り上げられたりしているんですよ。
誰もが知っている言葉と音、そこに語感を合わせることで、格段に覚えてもらいやすくなります。これがネーミングにおける「音の力」です。
ちなみに、私は「藤沢暮らし おじさま暮らし」という地域ブログを運営しています。
このブログ名もこのテクニックを使っています。「フジサワ(~イ・ア・ア)」と「オジサマ(~イ・ア・ア)」で母音を揃えました。五七調ではないですが、7音+7音で、日本人になじみやすいリズムになっています。
テクニック2:暗示する
商品内容をそのまま説明すると凡庸な名前になります。かといって、インパクト重視で突拍子のないキラキラネームにしてもダメ。その間を取るテクニックが「暗示」です。
暗示とは、商品の内容を直接説明せず、間接的にイメージさせること。
例えば、「舞妓はんひぃ~ひぃ~」。唐辛子の商品です。「舞妓はん」で京都発の商品であることを、「ひぃ~ひぃ~」という擬態語で辛さを、それぞれ間接的に表現しています。
このネーミングは、「ひぃ~」を2回繰り返しているのも効いていますね。記憶に残るネーミングです。
古くは、「味の素」もこの系統です。直接的に表現するなら、化学調味料とか、L-グルタミン酸ナトリウム。そうは言わずに、「味の素」にした。「これを入れたら美味くなりそう」。そんなイメージを暗示させています。
実はこの「暗示」、商標登録にも効果を発揮します。商品内容をそのまま説明した名前(記述的商標)だと、審査で拒絶されがち。商標登録されにくいんです。
一方、「舞妓はんひぃ~ひぃ~」のような暗示的な名前(暗示的商標)は直接的な説明ではないので既述的商標とは扱われません。審査を通りやすいんですね。
ネーミングの良さと商標登録のしやすさを兼ね備えた暗示的ネーミング。オススメです。
などを参考にしてみてください。
但し、ミスマッチの程度が大きすぎると、「これはないわー」と思われてしまうかもしれません。インパクトを出そうとしすぎてスベらないようご注意ください(笑)
テクニック3:かけことば、マルチミーニング
一つの言葉にいくつかの意味を重ね合わせると、言葉に深みが出ます。これが、かけことばとか、マルチミーニングと言われるテクニックです。
エヴァンゲリオンの庵野監督はこの手法の達人です。最新作のタイトルは「シン・エヴァンゲリオン」。「新」と書いてしまえば「新しいエヴァンゲリオン作品」という意味しか持ちません。でも「シン」とカタカナにすることで、「新」「神」「真」など多様な解釈が生まれ、見る人の想像力を掻き立てる。
漢字(表意文字)をカタカナ(表音文字)に変えるだけで、ネーミングに奥行きが生まれるんです。
実はこのブログのタイトル「ネーミング・ノウ」も、このパターンです。
ネーミングを知り(know)、ネーミングのノウハウを学び、ネーミング脳を鍛える!「ノウ」に3つの意味を重ねているんです。
テクニック4:意外性、あえてのミスマッチ
4つ目のテクニックが「意外性」と「ミスマッチ」。その商品カテゴリでは使わないような言葉を取り入れる。
「どんとこいブラ」なんて、その典型ですね。ブラジャーといったら、「天使のブラ」とか、「恋するブラ」みたいに、女性的でやわらかい言葉を使うのが普通じゃないですか。そこに、「どんとこい」みたいな男気あふれる言葉を持ち込む(笑)
この異物感というか、意外性が、めちゃめちゃ印象に残るわけです。
このメーカーの商品には、「脇肉キャッチャー」なんていうユニークなネーミングの商品もあります。この商品が発売されてから、年商は6千万円から2億4千万円と、4倍に跳ね上がったんですって!ネーミングの威力をまざまざと見せつける事例です。
テクニック5:造語にする

造語というと難しく聞こえるんですが、さほど難しいことではありません。ダジャレ感覚でいいです。
新橋で見かけた缶詰め専門店「カンダフル」。
「缶」+「ワンダフル」で「カンダフル」。たった一文字変えただけで、ステキなネーミングができました。でも、この世にない造語。だから独自性がある。
「カン(缶)」という音で、商品のイメージもが残っている。さらに、缶+ワンダフルだから、「缶詰めって素晴らしいんだぜ!」というメッセージも伝わる。
風呂敷専門店「ふろしきぶる」も似た系統。「風呂敷」+「フレキシブル」で「ふろしきぶる」。風呂敷の持つ用途の柔軟性を表現できています。
造語のバリエーションとして、語感を外国語風にするという方法もあります。
木彫りの熊風のチョコレート「キボリーヌ オ ショコラ」。「木彫り」をフランス語風に「キボリーヌ」と表現。外国語の響きを加えるだけで、名前の印象はガラッと変わります。
造語はウェブ検索でも効果を発揮します。既存の言葉は色々なところで既に使われていますから、自分の商品が埋もれてしまうんですね。歌手のAIさんは今のAIブームで検索しにくくなっているんじゃないでしょうか(笑)
でも、造語なら検索上位を狙えますし、暗示商標以上に商標登録もしやすい。もう、これは一石三鳥のテクニックです!
テクニック6:使用シーンをイメージさせる
商品内容そのものではなく、その商品を使ったらどうなるか?を伝えてあげるのも効果的なテクニックです。お客さんにとって大事なのは、「その商品を使ったら何が嬉しいのか?」というところですから。
そうであれば、商品名にも使用シーンや使用した時のメリットを盛り込んでみましょう。
のり佃煮「ごはんですよ!」は、台所からお母さんが子どもたちに呼びかけているイメージ。食事が始まるシーンやホカホカのご飯をイメージさせます。
「おーいお茶」も同じ系統。丸いちゃぶ台の前で、あぐらをかいている波平さんが台所のフネさんに向かって呼びかけている様子が目に浮かびます。昭和のお茶の間のシーンをそのまま切り取っているようです。
商品の内容ではなく、商品のある暮らしの一場面を名前に込める。そういうやり方をすると、鮮明なイメージが喚起される、良いネーミングができあがります。
テクニック7:擬人化する
最後の7つ目はちょっとしたテクニックです。商品に人格を持たせる。そうすると、「物」が「人」になって、途端に親しみが湧きます。友達になったようで、覚えてもらいやすくなります。
アイスの「ガリガリ君」、防虫剤の「ミセスロイド」、スナック菓子の「えだまりこ」。人名風にしたり、語尾に「君」「さん」をつけたりするだけで、商品がぐっと身近な存在になります。
関西の方は、「あめちゃん」とか、「お豆さん」なんて言うじゃないですか。あれですよ、あれ(笑)
まとめ:7つのテクニックの共通点

※画像はAI(NotebookLM)で生成
7つのネーミングテクニックを紹介しました。
共通するのは、説明するな、感じさせろということです。頭で理解させるのではなくて、感覚的に捉えてもらう。これが大事です。
まずはダジャレを考えてみる。韻を踏んでみる。全然関係なさそうな言葉を組み合わせてみる。こういう型を使いながら、見た人の感情を動かせないか考えてみてください。
センスがない人でも鍛えることはできます。そのトレーニングが「言葉遊び」です。日常の積み重ねの中から、良いネーミングを生み出す基礎体力が養われます。
「やにわにビリヤニ」を見て思わずニヤッとした、あの感覚。こういうのが、ネーミング上手になる出発点ですよ。
なお、「なぜ良いネーミングが必要なのか」「ネーミングの本質的な考え方」については、こちらの記事も合わせてお読みください。
→ 「良いネーミング」の誤解を解く。売れる名前には理屈がある
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