商標登録の区分・第35類の商品・役務(小売等役務)を弁理士が解説!

class35 弁理士が解説!商標登録の区分 第35類のサービス(小売)

初めての人にはわかりにくい商標登録の区分(商品・役務の区分)について特許事務所の代表弁理士が解説します。

今回解説するのは第35類のうち「小売等役務」について。商標登録をしたい小売店、卸売店、インターネット通販(e-コマース)業者の方は必見です。

この記事では、商標登録の区分・第35類の役務(サービス)のうち、「小売等役務」について解説します。

商標登録の申請書類には、

  • 商標登録を受けようとする商標(商品のネーミングや会社のロゴマーク)
  • その商標を使いたいたい商品・役務(サービス)
  • その商品・役務(サービス)の区分

を記載する必要があります。

「区分」は全ての商品・サービスを第1類から第45類までの45個のグループに分類したものです。区分の記載に誤りがあると、特許庁手数料が余計にかかったり、商標登録の申請が拒絶されたりするので、商標登録をしたい人は区分について理解しておく必要があります。

区分には45個もグループ(類)があります。第45類の内容を確認する前に、第1類から第45類までの区分全体をざっと俯瞰してみることをオススメします。

まずは、商標登録の全区分(第1類から第45類まで)を弁理士が解説!という記事から読んでみてください。

目次

「第35類(小売等役務)」について

第35類に含まれるサービスは、「小売等役務」と「小売等役務以外のサービス」に分けることができます。今回は「小売等役務」について解説します。

第35類の「小売等役務」とは、「小売」又は「卸売」の業務において行われる総合的なサービス活動(例えば、商品の品揃え、陳列、接客サービスなど)を指します。

「小売等役務」は「商品を販売すること」自体ではありません。顧客のために各種商品を取り揃え、商品を買ったり、選んだりすることを便利にする、そのための接客行為などが「小売等役務」です。

商標登録を申請する際に「商品」を指定するか、「小売等役務」を指定するかの判断基準の一つは、申請しようとする商標を商品(またはそのパッケージ)に直接表示するか、それ以外の場所に表示するか、です。

例えば、スーパーの商品棚を思い浮かべてください。明治、雪印、森永など各社の牛乳が並べられていますよね。

これらの牛乳のパッケージには明治、雪印、森永などの会社名や固有の商品名(すなわち、商標)が表示されています。乳業メーカーが会社名や商品名などの商標について商標登録をしたい場合には、商品「牛乳」を指定します。

これに対し、これらの牛乳を小売しているスーパーはスーパーの店名「●●スーパー」という商標をお店の看板、店員の制服、ショッピングカートなどに表示します。牛乳のパッケージに「●●スーパー」とは表示しません。

スーパーが「●●スーパー」という商標を登録したい場合には、たとえ牛乳を販売していても、商品「牛乳」ではなく、「小売等役務」を指定するのです。このように、「小売等役務」は自社の商品を販売するのではなく、他社の商品を販売する場合に特に重要です。

「第35類(小売等役務)」のサービス例

「第35類(小売等役務)」には、例えば以下のようなサービスが含まれます。

  • 衣料品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供(類似群コード:35K01)
  • 被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供(類似群コード:35K02)
  • 飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供(類似群コード:35K03)

衣料品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供(類似群コード:35K01)

衣・食・住にわたり各種商品を一括して扱う小売業者又は卸売業者(例えば、デパートや総合スーパーなど)が行うサービスです。「各種商品を一括して取り扱う」という部分がポイントです。

被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供(類似群コード:35K02)

洋服やネクタイ、靴下などの衣料品(特に、自社のオリジナルブランドではないもの)を扱う小売業者又は卸売業者(例えば、衣料品店など)が行うサービスです。

この「類似群コード:35K02」には「被服」以外にも、

  • 織物および寝具
  • おむつ
  • 履物
  • かばん類及び袋物
  • 身の回り品

の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、のサービスも含まれます。

飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供(類似群コード:35K03)

飲食料品全般(特に、自社のオリジナルブランドではないもの)を取り扱う小売業者又は卸売業者(例えば、食料品スーパーなど)が行うサービスです。

この「類似群コード:35K03」には「飲食料品」以外にも、

  • 酒類
  • 食肉
  • 野菜及び果実
  • 菓子及びパン
  • 米穀類
  • 牛乳
  • 清涼飲料及び果実飲料
  • 茶・コーヒー及びココア
  • 加工食料品

の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、のサービスも含まれます。

「第35類(小売等役務)」のサービス一覧リスト

【35類(小売等役務)】

No.類似群コード商品・役務名
135K01衣料品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
235K02 織物及び寝具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
335K02被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
435K02おむつの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
535K02履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
635K02かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
735K02身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
835K03飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
935K03酒類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
1035K03食肉の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
1135K03食用水産物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
1235K03野菜及び果実の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
1335K03菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
1435K03米穀類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
1535K03牛乳の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
1635K03清涼飲料及び果実飲料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
1735K03茶・コーヒー及びココアの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
1835K03加工食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
1935K04自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
2035K05二輪自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
2135K05自転車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
2235K06家具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
2335K06建具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
2435K06畳類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
2535K07葬祭用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
2635K08電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
2735K09手動利器・手動工具及び金具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
2835K09台所用品・清掃用具及び洗濯用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
2935K10薬剤及び医療補助品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
3035K10化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
3135K11農耕用品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
3235K11花及び木の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
3335K12燃料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
3435K13印刷物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
3535K13紙類及び文房具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
3635K14運動具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
3735K14おもちゃ・人形及び娯楽用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
3835K15楽器及びレコードの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
3935K16写真機械器具及び写真材料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
4035K17時計及び眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
4135K18たばこ及び喫煙用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
4235K19建築材料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
4335K20宝玉及びその模造品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
4435K21ペットの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供

小売等役務は併記してある類似群コードの商品と類似する商品・役務として扱われます。例えば、商品「被服」を指定した「ユニクロ」という商標が既に登録されている場合に、別の人が「被服の小売又は卸売・・・」という役務を指定して商標「ユニクロ」について商標登録を申請した場合、「被服」を指定した「ユニクロ」と重複するという理由で、商標登録は認められません。

「第35類(小売等役務)」についてのまとめ

今回は、「第35類(小売等役務)」について解説しました。

このグループには、

  • 衣料品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売に関するサービス
  • 被服の小売又は卸売に関するサービス
  • 飲食料品の小売又は卸売に関するサービス

などが含まれます。

これらのサービスに関わる、商標登録をしたい小売店、卸売店、インターネット通販(e-コマース)業者の方々にはチェックして欲しい区分です。商標登録を検討する際はぜひ第35類のサービスをご検討ください。

参考資料

このページは特許庁の公開情報を基に作成しています。参考にした資料は以下のとおりです。
令和7年1月1日に発効した「国際分類第12-2025版」に対応した最新情報です。

商品・役務の分類に関する情報|特許庁

商標登録に興味が出てきた人へ

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山田 龍也
この記事を書いた人
弁理士/ネーミングプロデューサー/テキスト職人。ローテク特許/ネーミングから始める商標登録。専門誌「美容の経営プラン」で「守りと攻めのネーミング」を5ヶ月連載。経済産業省・中小企業庁「ふるさとデザインアカデミー」講師。樺沢紫苑セミナーコンペで3位入賞。全ては言語化から始まる。趣味はスイーツの食べ歩き。
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