事例・風味かまぼこ「ほぼカニ」「ほぼホタテ」「ほぼカキフライ」から学ぶネーミングのコツ|あえてユルさを出す
「ほぼシリーズ」は、練り物を得意とするカネテツデリカフーズ(以下、カネテツ)が開発した風味かまぼこです。
従来から、カニ風味のかまぼこ(カニカマ)は知られていますよね。
しかし、カネテツは、ほぼシリーズ第一弾の「ほぼカニ」に留まらず、第二弾「ほぼホタテ」、第三弾「ほぼエビフライ」、第四弾「ほぼカキフライ」と、続々と新製品を発表しています。
風味や食感にこだわりまくり、従来の風味かまぼこを超越した再現性が話題となっています。
(1)商品に対する期待値を必要以上に上げる商品名は避ける
「ほぼシリーズ」は、言ってみれば「ニセ物」です。
本物のカニ、ホタテ、カキフライではありません。
しかし、かなり精巧に作られた「ニセ物」であり、開発には相当の時間や手間、技術者の苦労があったはずです。
ともすると、開発が成功し、商品化に至ったときには、「本物」に極限まで近づいたことを過剰にアピールする商品名を採用してしまいがちです。
そのような商品名は、仮に、食べた人が「本物とは違う」と感じた時に「全然、カニじゃないじゃん!(怒)」というネガティブな反応に繋がるおそれがあります。
自ら、商品に対する期待値・ハードルを必要以上に上げる商品名は避けた方が良いのです。
(2)ネーミングテク「あえてユルさを出す」
しかし、カネテツは「ほぼ」というワードを使って、あえてユルさを出しています。
「ほぼ」には、本物ではないことを緩やかに伝える効果があります。
「『ほぼ』ってなんだよ(笑)」と、ツッコミを入れられる余地を残しているわけです。
仮に、食べた人が本物との違いを感じ取ったとしても、「うん。『ほぼ』ね。よくできているんじゃない?」と納得してもらえます。
その一方で、「ほぼ」というワードには「限りなく本物に近い」というニュアンスもあります。
実際に食べてみて「本物に近い!」と感じた人は「『ほぼシリーズ』はすごい!」というポジティブな感情を持ってくれるでしょう。
「ほぼ」は二面性がある、多義的なワードです。
「ほぼシリーズ」のネーミングでは、この「ほぼ」というワードのユルさがポイントになっているのです。
(3)「あえてユルさを出す」のメリットは、商品やサービスに対する過剰な期待を抑えること
商品名には、買い手に対して商品の特徴や良さを伝えるという役割があります。
ネーミングの際にそれを意識しすぎると、
● メッセージがダイレクト過ぎてつまらない商品名になる
● 商品の特徴や良さのアピールが強過ぎて胡散臭い商品名になる
ということが起こりがちです。
実際、カニかまに「カニスチック」という商品名を付けて売り出したところ、公正取引委員会からカニが全然入っていない点を指摘され、商品名を変更させられたという事例もあります。
「あえてユルさを出す」というネーミングには、
● 商品やサービスに対する過剰な期待を抑える(ハードルを下げる)
というメリットがあると言えるでしょう。
また、
● 見る人によって異なる解釈をしてもらえる(解釈の幅が広がる)
● 親しみやすさを出す
というメリットもありそうです。
まとめ
商品やサービスの良さばかりをアピールすると、却ってそれが鼻につくものです。
さほど期待していなかったのに、実は素晴らしい商品・サービスだった、という方が感動してもらえます。
ご自慢の新商品・新サービスに付ける名称についてはアピールを程々に、ちょっとユルいエッセンスを加えると良いかもしれませんよ。
おまけ
「ほぼ」を使ったネーミングの元祖は、コピーライターの糸井重里さんが主催するウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」です。
新聞は本来、日刊であるべきですが、「ほぼ日刊」とすることでユルさを出しています。
でも、実は1998年6月6日創刊以来、一日も休まずに更新を続けているそうです。
やることはきちんとやる、でもネーミングはユルく、というのがイイんです。
ネーミングに興味が出てきた人へ
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