「ボクササイズ」。ボクシング的な動きを取り入れたエクササイズ的な意味で使われることが多いこの言葉。普通名称のように見えますが、実は商標登録されています。特定の商品やサービスについて「ボクササイズ」という言葉を使うと商標権の侵害となるケースがあるので要注意です。
皆さんは、「ボクササイズ」をご存知でしょうか?
「ボクササイズ」とは、ボクシングジムの会長・三迫正廣さんによって提唱されたトレーニング法で、
プロボクサーを目指す方たちのトレーニング法を、ダイエットと体力増強を目的にアレンジしたもの。
引用元:調布三迫ボクシングジムウェブサイト
と説明されています。
「ボクササイズ」は商標登録されている
「ボクササイズ」は商標登録されています(商標登録 第3096779号)。
商標はアルファベット書きの「BOXERCISE」。そしてその上段に、ルビのような形でカタカナの「ボクササイズ」が付記されています。この商標を使用する役務(サービス)としては、第41類「ボクシング式有酸素運動その他のスポーツ又は知識の教授」が指定されています。
登録番号 | 商標登録 第3096779号 |
登録日 | 1995年(平成7年)11月30日 |
登録商標 | |
指定役務(サービス) | 第41類「ボクシング式有酸素運動その他のスポーツ又は知識の教授」 |
商標権者 | 有限会社ボクササイズ協会 |
商標登録されたのもかなり古く、1995年(平成7年)11月30日。30年近くも前です。その後、商標権は移転され、今は「有限会社ボクササイズ協会」が商標権者となっています。
この商標権は登録商標「ボクササイズ/BOXERCISE」を、指定役務「ボクシング式有酸素運動その他のスポーツ又は知識の教授」について独占的に使うことができる権利です。
ということは、「ボクササイズ」という言葉を使って、「ボクシング式有酸素運動」を教えることができるのは、有限会社ボクササイズ協会と、そこから許諾を受けた人だけです。
それ以外の人が勝手に「ボクササイズ」という言葉を使って、「ボクシング式有酸素運動」を教えてしまうと、その人はこの商標権を侵害していることになります。
でも、ほとんどの人は「ボクササイズ」を一般名称・普通名称だと思いこんでいますよね。このため、うっかり使ってしまう人が出てくるわけです。
「ボクササイズ」の商標トラブル
神奈川県藤沢市が登録商標の「ボクササイズ」をうっかり使ってしまい、トラブルになったことがあります。
知らずに「ボクササイズ」商標権侵害 藤沢市が都内ジムに20万円賠償
神奈川新聞 | 2016年5月31日(火) 02:00
「ボクササイズ」の名称が商標登録されていることを知らずに市の事業で無断使用していたとして、藤沢市は30日、商標権を持つ東京都内のボクシングジムに20万円の損害賠償を支払うことを明らかにした。
ボクササイズは、ボクシングの要素を取り入れたエクササイズ。市は2006~15年に延べ119回、市内の10公民館で体験教室を開催し、ボクササイズと銘打ってチラシや広報で参加者を募集していた。
(以下略)
確かに地方自治体がエクササイズに関する体験教室を開催することはありそうですよね。
その際に、「ボクササイズ教室」などのタイトルでチラシを配ったり、イベントを開催すれば、それはこの商標権の侵害になってしまうのです。
藤沢市は「まさか商標登録されているとは思わなかった」とコメントしていますが、これは地方自治体としてはお粗末。使用する前に商標チェックをするべきでした。
損害賠償額(和解額)は20万円でした。
公民館講座に係る賠償金の支払いについて|藤沢市
正直、賠償金20万円はこの程度なの?と感じました。警告等を行うために弁護士さんにも仕事を依頼していると思います。弁護士費用を支払ったら金銭的利益なんてほとんどないでしょう。
これは私の予想ですが、ニュースでの宣伝効果に期待しているのかもしれません。ここは地方自治体を狙い撃ちしているように見えるからです。
本来、この人たちの競合はトレーニングジム・スポーツジムのはず。地方自治体ではありません。でも、地方自治体がそういうトラブルを起こしたとなると、必ずニュースになりますからね。ニュースに取り上げられれば、「ボクササイズ」が自分たちの商標であることのアピール・宣伝になります。
「ボクササイズ」事件から学びたいこと
「ボクササイズ」のように、一見、普通名称のように見えて実は商標登録されている名称は多数あります。例えば、「断捨離」なども商標登録されています。
自分がビジネスで使うネーミングやロゴマークについては、
- 誰かが商標登録していないか?
- 自分の使用が商標権の侵害にならないか?
を必ずチェックをするようにしてください。
例えば、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)が運営する特許情報プラットフォーム(j-platpat)を使えば、すでに商標登録されている商標を誰でも無料で調べることができます。
但し、自分が使おうとしている商標と、すでに登録されている商標が似ているかどうかの判断は専門的であり、一般の方には難しいケースもあります。そのような場合には、商標の専門家である弁理士に相談してください。
商標というと、自分が登録することばかりを考えてしまいがちです。しかし、大事なのは自分が登録することばかりではありません。
他人が商標登録していないか?
これをチェックすることが大事なのです。
似たようなトラブルとして、「断捨離」トラブルがありました。こちらの記事もあわせて読んでみてください。
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