「ほっかほっか亭」の商標トラブルから学ぶ、ブランド名を守る重要性

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「まだあるんだ!」と言われてしまった「ほっかほっか亭」ブランドの危機

「ほっかほっか亭って、まだあるんだ!」

SNSでこんな声が話題になりました。

https://twitter.com/HokkahokkaP/status/1955414424988291145

ほっかほっか亭の公式Xが「まだ・・・?」という悲しみの声を投稿して、20万いいね、1.3万リポストのバズ投稿となっています(2025年8月14日現在)。

ただ、ほっかほっか亭はこのバズを素直には喜べないはずです。
「まだあるんだ!」と言われてしまうのはブランドの認知度の低下とも言えます。それが、ほっかほっか亭ブランドの現在地なのです。

この出来事から感じるのは、ブランドは管理を怠ればその価値を失うということです。

「ほっかほっか亭」騒動を振り返る

最盛期には全国で約3,500店舗を運営していたと言われる「ほっかほっか亭」。「持ち帰り弁当業界の覇者」と言っていいでしょう。
この「ほっかほっか亭」はダイエー(東部エリア)・ハークスレイ(関西エリア)・プレナス(九州・山口エリア)の3社による地域フランチャイズ制を採用していました。

しかし、1999年。経営が悪化したダイエーとプレナスとの対立が表面化。「ほっかほっか亭」の商標権を巡って、泥沼の戦いが始まりました。
そして、2008年。プレナスはフランチャイズ契約を破棄し、「ほっともっと」ブランドを立ち上げる事態に。
それでも、「ほっかほっか亭」本体とプレナスとの裁判は2014年まで続いたのです。

現在は、「ほっかほっか亭」(ハークスレイ系)と「ほっともっと」(プレナス系)が、それぞれ独立したブランドで営業を続けています。

商標登録制度はブランドを守り、争いを未然に防ぐための法律制度

商標は、ただの「名前」「ロゴ」「キャッチフレーズ」ではありません。
企業が行っている商売・提供している商品やサービスに対する顧客からの信用の証、そのシンボルです。それ自体に財産的な価値があるんです。

ただし、たとえ一番初めにその商標を使っていたとしても商標登録をしなければ、他社を排除する権利は認められません。
商標制度は、商標を登録して初めて商標権(独占権)が発生し、公にその人の権利だと認める制度です。
これにより、他社が似た名前を使うことを防ぐことができ、ブランドの信用を法的に守ることができるのです。

フランチャイズ制度は商標の落とし穴になりうる

しかし、「ほっかほっか亭」は商標登録をしていたにもかかわらず、こんなトラブルに巻き込まれてしまいました。

これは「地域フランチャイズ制」という制度が関係しています。複数人(複数社)で事業を運営すれば、必ずトラブルが発生します。最初は仲良くやっていても、そこにお金が絡めば争いになるのが人の性…。

それなのに、最初の仲の良い状態を前提に、ゆるゆるの契約を結んでしまった。万が一、トラブルがおきたときのことを決めていなかった。
あなたの会社の契約書には、共同事業者が離脱した際のブランド名の扱いについて、明確な記載がありますか? もし、すぐに『はい』と答えられないなら、注意が必要です。

最悪の事態が起きた時にどうするかを決めておく。それが契約ですよ。

商標は登録してからの使い方次第で、ブランドが成長するかどうかが決まる

商標は登録して終わりではありません。登録された商標(登録商標)を正しく使っていくことが必要です。
商標を正しく継続的に使っていくことで、そのブランドが成長していくんです。

一度、商標登録に成功したとしても、商標を使って認知度を上げていかなければ、その商標に信用が蓄積していくことはありません。商標を使っていなければ取消審判で商標登録を取り消される可能性だってあります。

商標は使ってなんぼなのです。

「ほっかほっか亭って、まだあるんだ!」はブランドの認知度の低下・ブランド力の低下を意味する

最盛期に全国3,500店舗を誇った「ほっかほっか亭」でも、「まだあるの?」と言われてしまう。
「ほっかほっか亭」は「ほっともっと」にブランド変更したんじゃなかったの?と勘違いしている人も多い。

これは「ほっかほっか亭」ブランドの認知度の低下・ブランド力の低下と言わざるを得ません。人間は接触頻度が高いもの(よく見るものやよく聞くもの)を大事なものだと認識します。

分裂後、『ほっともっと』は積極的に店舗展開や宣伝を行っていて、強い印象を残しています。
これに対し、『ほっかほっか亭』は店舗がなくなった地域も多く、触れる機会が減ってしまった人も多い。
そうすると、どうしても人々の記憶の中から「ほっかほっか亭ブランド」が薄れていってしまうのはいたしかたないことなのです。泥沼の商標トラブルも原因の一つでしょう。

私のクライアントさんを見ていても、ただ商標登録しただけなのにそれで満足してしまう人が多いです。商標登録しているだけでは、ブランド力があることを意味しません。

SNSやメディアを通じて商標を使っていく。自分たちの事業の存在をアピールしていく。それが大事なのです。

商標トラブルを未然に防ぐ対策

『うちはフランチャイズじゃないから大丈夫』と思っていませんか?

この問題は、共同経営者、業務提携先、販売代理店など、自社以外の人や会社がブランド名を使う場面ではどこでも起こり得ます。

でも、安心してください。以下の3点を押さえておけば、こうしたトラブルの大部分は防ぐことができます。

  • ブランド名を早期に商標登録する
  • フランチャイズ契約の中に、商標の使用ルールを明文化しておく
  • フランチャイジーの商標の使用状況を記録・管理する

専門家の視点:最初が肝心。商標とブランドの戦略

「ほっかほっか亭」のように法的トラブルに巻き込まれてしまうと、会社の信用に傷がつく他、金銭面・精神面で大きなダメージを受けることになります。

商標の使用開始前にきちんと商標戦略・ブランド戦略を立てておくのが肝心です。思いつきで商標登録をしてしまうと、あとでリカバリーができません。
商標の使用開始前、商標の出願前にご相談いただくことで、先行商標の調査を行い、より強いネーミングを提案することも可能になります。商標登録を考えている方はまず弁理士にご相談ください。

あなたのブランドの価値を守るために、商標戦略・ブランド戦略を考えてみませんか?

※商標やネーミングでお悩みの方は、ネームチェンジャー・弁理士のヤマダがお手伝いします。お気軽にご相談ください。

トークライブのお知らせ

来週8/20(水) 21時から、「商標登録って、本当に意味あるの?」 というトークライブを開催します。

ライブでは、制度の基本から登録後の活用法まで、弁理士が分かりやすく解説します。

  • 商標登録を検討中の方
  • 登録済みだけど活用できていない方
  • 人に勧められたけど、ピンと来ていない方

必見です! 事業を成長させるヒントがここにあります。
このライブに参加すれば、商標登録の『モヤモヤ』が解消され、自社のブランドを守り、育てるための具体的な次の一歩が見えるようになります。

▼詳細・申込はこちら

Peatixイベントページ「商標登録って、本当に意味あるの?」

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山田 龍也
この記事を書いた人
弁理士/ネーミングプロデューサー/テキスト職人。ローテク特許/ネーミングから始める商標登録。専門誌「美容の経営プラン」で「守りと攻めのネーミング」を5ヶ月連載。経済産業省・中小企業庁「ふるさとデザインアカデミー」講師。樺沢紫苑セミナーコンペで3位入賞。全ては言語化から始まる。趣味はスイーツの食べ歩き。

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