炎上スローガン「ONE自民」に学ぶ、言語化センスとネーミングについての教訓

表舞台に出る人は「言葉の選び方」「ワードセンス」が問われます。これは政治の世界でも同じです。2025年9月、次期自民党次期総裁の有力候補・小林鷹之氏が掲げたスローガン「ONE自民」が、ネット上で酷評にさらされました。「クソダサい」「伝わらない」「薄っぺらい」…。

【ポスト石破】ネット大不評「はぁ?」「クソダセェ」小林鷹之氏がTVでスローガン連発も酷評→「無理だろw」「薄っぺらい」「ウケるw」「NO自民」若手ホープが使い古されたワードを|デイリースポーツ



共感の声は皆無。むしろ嘲笑的なコメントが相次いで投稿されています。この一件は、企業の理念やスローガンの言語化、商品名のネーミングに関わる企業の方にとっても多くの示唆を与えてくれる事例です。

今回はこの「ONE自民」炎上を題材に、企業人が言語化やネーミングについて、どういうスタンスで臨めばいいかを考えてみましょう。

目次

「ONE自民」が響かなかった理由(その1):言葉の賞味期限切れ

古くはフランスの小説「三銃士」に登場した「One for all, all for one」(一人はみんなのために、みんなは一人のために)。記憶に新しいところでは、2019年ラグビーワールドカップ(W杯)の際の日本代表のスローガン「ONE TEAM」。

「ONE」は組織や集団の結束力を示す言葉としてよく使われます。誰もが好きな言葉です。私もラグビーW杯直後、「ONE ●●」というネーミングを提供したことがありますから。

でも、ラグビーW杯ももう6年前の話。言葉の旬の時期はすぎました。そして、この「ONE」はいかんせん使われすぎた感がある。新鮮味や独自性に欠ける。今になって、この「ONE」を持ち出してきても、「なんで今さら?」と思われてしまうのは致し方ないところです。

「ONE自民」が響かなかった理由(その2):実態との乖離

いくら素晴らしいワードを持ってきたとしても、実態からかけ離れていると歯の浮くような言葉になり、聞いている人に違和感を与えてしまいます。

今の自民党は党内での対立が外から見ても明らかです。「俺たちは一つだ。結束している」とアピールしたいのでしょうが、分裂気味で崩壊寸前の自民党の人から「ONE」というメッセージを出されても、全く説得力がありません。ピンとこない。

実態と言葉が乖離しているからです。

言語化やネーミングは「真の自分」を言葉で表現すること

言語化やネーミングというと、カッコいい言葉や面白い言葉を見つけてくることだと思っている人が多いのですが、それは勘違いです。

ネーミングにしてもキャッチコピーにしても、ただの言葉遊びではありません。企業の、個人の「真の姿」を浮き彫りにするものです。「商品づくりにかける想い」、「顧客に対する姿勢」、「社会的使命」…。そういうものがにじみ出るように言葉を紡ぎ出す必要があるんです。

では、「ONE自民」はどうでしょうか?

総裁選を控え、自民党内への呼びかけという側面もあるんでしょう。それでも、今、自民党には逆風が吹いています。批判にさらされています。

もっと社会や国民に対するメッセージを感じられるものの方が共感を得られたのではないか?と思わざるを得ません。

ブランディングは共感設計

企業でも全く同じことが言えます。「かっこよく見せたい」「今流行りのワードを入れたい」という安直な気持ちで決めたネーミングやスローガンは響きません。

経営者が鶴の一声で決めてしまったネーミングでホントに大丈夫ですか?市場に商品を出してダダスベりしてからでは遅すぎますよ。
「自分たちが気に入っている言葉か」よりも、「その言葉が相手にどう受け取られるか」「ちゃんと伝わるか」の方がずっと大事なんです。

言語化やネーミングはしっかり検討しましょう。

プロに丸投げはNG。自分の言葉を探し、磨いておこう

言語化やネーミングを我々プロにまかせるというのも一つの方法です。ただ、丸投げはオススメできません。

我々は言語化やネーミングの専門家です。でも、あなたの事業の専門家ではありません。事業の専門家ならではの言葉の方が説得力があるはずです。
私もネーミングを全て自分で作ってお渡しすることは少ないです。あなたの中にあるキラキラとした言葉の原石を掘り出して磨く。そのお手伝いをしています。

ネーミングのプロが作ったから良いネーミングなんだと鵜呑みにせず、自分でも言葉を精査し、納得感のある言葉を探す努力をしてほしいなと思っています。

響く言葉を見つけるには?

言葉を探せと言われてもやり方がわからないよ、という方もいるでしょう。自分にぴったりな言葉を見つけるポイントをいくつか挙げてみましょう。

お客様が使う言葉に耳をすます

自分目線ではなく、顧客視点に立つといつもとは違う言葉が出てきます。

お客様はあなたの商品のどんなところが気に入ってくれていますか?どんな言葉でホメてくれますか?その言葉の中にヒントがあるはずです。

商品そのものの特性ではなく、開発の背景を深堀りしてみる

商品自体の説明をしようとすると、競合品と似たり寄ったりの言葉になってしまいます。

なぜその商品を開発しようと思ったのか?どんなお客さんに喜んでほしいのか?そのんあところを深堀りしてみると、競合他社とは違う色合いの言葉が出てきます。

その商品でどんな未来を目指しているのかを考える

その商品を使うことでお客様にはどんな未来が待っているんでしょう?どんな変化が訪れますか?
こういうこともワード出しのヒントになると思いますよ。

まとめ

今回の「ONE自民」の炎上は、政治だけの話ではなく、私たち経営者にとっても「伝える言葉」の重要性を考えるきっかけになりそうです。

ネーミングやスローガンがうまく機能すれば、人の心に響くものとなり、記憶に残るものとなる。あなたの会社のブランドが強固なものとなり、事業が発展する。逆に、響かない言葉を使えば共感を得られないだけなく、信頼を損なうことさえある。

あなたの会社のスローガンや商品名を今一度見直してみませんか?
言葉は企業にとっての資産・財産となりますから。

もし言葉に迷ったときは、ネーミングと商標登録のプロにぜひご相談ください。一緒に、あなたの会社だけの「伝わる言葉」を見つけていきましょう。

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山田 龍也
この記事を書いた人
弁理士/ネーミングプロデューサー/テキスト職人。ローテク特許/ネーミングから始める商標登録。専門誌「美容の経営プラン」で「守りと攻めのネーミング」を5ヶ月連載。経済産業省・中小企業庁「ふるさとデザインアカデミー」講師。樺沢紫苑セミナーコンペで3位入賞。全ては言語化から始まる。趣味はスイーツの食べ歩き。

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