「〇〇高校生立入禁止」騒動に学ぶ、ブランドのリスクマネジメントとは?

コンビニの「◯◯高校生立入禁止」騒動

コンビニエンスストア「ミニストップ」の貼り紙が話題になっています。「〇〇高校生立入禁止」の貼り紙です。

私は弁理士として商標登録に携わる傍ら、ブランドづくりについてのコンサルティングも行っています。
ブランドの専門家という視点から見ると、この一件は多くの企業にとっての重要な教訓を含んでいると感じました。

何かのトラブルに悩まされた結果、やむを得ず出した貼り紙なんだと思います。
ただ、こういう貼り紙一つがせっかくのブランドを揺るがすこともありますので要注意です。

目次

一枚の貼り紙が、ブランドを揺るがす

2025年9月、神奈川県藤沢市のコンビニ「ミニストップ」で掲示された

〇〇高校生立入禁止(学校承認済み)

という貼り紙がSNSで拡散され、注目を集めました。

「〇〇高校生立入禁止」ミニストップ店舗の張り紙が話題 学校「何も答えられない」|弁護士ドットコムニュース

店舗名や学校名が具体的に記載されていたため、投稿は瞬く間に拡散されました。今は画像は削除されていますが、元の画像はいまだ複数のSNSで拡散され続けています。

事件の経緯と対応のズレ

学校側はこの件に関し、「回答できない」とだんまりを決め込んでいます。
店舗を運営するミニストップの本部は「掲示は不適切」と判断し、該当店舗に対し、貼り紙の撤去を指示しました。

この件に関しては、「高校生の方が悪い。ミニストップは悪くない」というコメントが多いように見えます。

しかし、実はミニストップは以前にも店舗の貼り紙で炎上しているんですよね。

午後10時から午前7時まで外国人にたばこの販売ができません

外国人によるたばこの窃盗事件があったことをきっかけに、上記のような貼り紙を掲出したところ、「ミニストップは排他的だ!」とSNSで炎上、謝罪に追い込まれたことがあったんです。

店舗に「外国人にたばこ販売できない」の張り紙 ミニストップが謝罪、人権教育徹底へ|産経新聞

現場判断がブランドに与える影響

問題は、貼り紙を現場の判断で作成し、掲示してしまった点です。  

ミニストップ本部は、「客からの問い合わせを受けて発覚し、既に撤去した。実際に販売を拒否していたかどうかは分からない」と言っています。

今はネット時代、SNS全盛の時代。たった一店舗の、たった一枚の貼り紙が、「ミニストップ」ブランド全体の印象を左右しかねないことを頭に入れておく必要があります。

カスハラ対策と「選ばれる顧客」の線引き

最近では、コンビニだけでなく接客業界全体で「カスタマーハラスメント」への対応が進んでいます。従業員の安全を守るという観点から、「出禁」や「注意喚起」をせざるを得ないこともあるでしょう。

ただ、それを一店舗が独断で、感情的に判断し、貼り紙を出していいとは思いません。全国のミニストップ店舗に、ミニストップブランド全体に影響を与えるわけですから。
特に、「特定の誰かを排除している」と取られかねない表現には繊細な配慮が求められます。 

たとえ、「自分たちは正しい」と思っても、炎上してしまったらアウト。結局、ブランド毀損や顧客の信用喪失などの不利益を受けるのは自分たちなのです。

「禁止」ではなく、「変化」を促す表現を

貼り紙ひとつとっても、「禁止」ではなく「協力のお願い」といった表現を選ぶことで、相手の反発は防げる可能性があります。

トイレを汚さないでください

と書くより、

いつもトイレをきれいに使っていただき、ありがとうございます

と書いた方が、相手の反発は和らぎます。自然に相手も「気をつけよう」と思ってくれるはずです。
相手にして欲しい行動は同じでも、言葉一つ、表現一つで相手の受け取り方は変わってくるんです。

経営者が見直すべき、ブランドマネジメントの視点

今回は貼り紙でしたが、SNSの発信などにも注意する必要があります。

今はどこの店舗からでも、社員の誰もが、SNSで発信することができる時代と言えます。その一つ一つの発信が、ユーザー側にはブランド本体からのメッセージ「ブランドメッセージ」と捉えられてしまうということです。

各社員に発信を任せるにしても、「SNS発信ガイドライン」などを整備し、意識付けを行うことが必要でしょう。
経営者自らがブランドの価値観やスタンスを明確にし、それを社内に浸透させていく必要があるということです。

ネーミングやコピーにプロの力を借りることも選択肢の一つ

今回のようなトラブルを見て思うのは、言葉には「伝え方のリスク」が常にあるということです。

ネーミングやコピーライティングの専門家は言葉に対する感覚が鋭敏です。同じことを表現するにも何通りものバリエーションを持っています。意図を的確に伝えつつ、誤解を生まない表現を設計するのが仕事ですから。

ブランディングにおいては、発信する一つ一つの言葉を丁寧に精査する必要があります。「ある一つのこと」を伝えるにも、「どう伝えるのか」が問われるということです。

言葉の設計士・開発者、言葉のデザイナーである、ネーミングやコピーライティングのプロに力を借りることも一つの考えです。

まとめ:ブランドとは日常の判断の積み重ね

企業のブランドは、広告やPRなどの一過性の施策だけでつくられるものではありません。

日々の現場での対応、例えば貼り紙、SNSでのやりとり、店頭での挨拶などもブランドの一部です。お客様とのすべての接点(タッチポイント)で「一貫性」を持って、地道に伝えていく必要があります。

「ブランディング」というと、外向けの施策だと思われがちですが、実は企業やブランドの理念や価値観を社内に浸透させていくこと(インナーブランディング)が大事なのです。

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山田 龍也
この記事を書いた人
弁理士/ネーミングプロデューサー/テキスト職人。ローテク特許/ネーミングから始める商標登録。専門誌「美容の経営プラン」で「守りと攻めのネーミング」を5ヶ月連載。経済産業省・中小企業庁「ふるさとデザインアカデミー」講師。樺沢紫苑セミナーコンペで3位入賞。全ては言語化から始まる。趣味はスイーツの食べ歩き。
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