商標登録は「ゴール」ではなく「スタート」。取って終わりにしないための考え方

記事のアイキャッチ画像。左側に、ゴールテープを切った瞬間のランナーが描かれているが、テープの先には霧のかかった道がまだ続いており、ランナーは商標登録証(巻物状)を手にしたまま走り続けている。「ゴールだと思った地点が、実はスタートだった」ことを表現。右側に大きく「商標登録は『ゴール』ではありません。」、その下に赤字で「あなたのブランドを守るために、登録後に絶対やるべき『監視』の話。」と記載。NotebookLMで作成。

※アイキャッチ画像はAI(NotebookLM)で生成

商標登録証をSNSにアップして、フォロワーさんから「いいね」をもらう。「すごいですね!」と言われて、満足感にひたる。

実は、僕も開業当初はやっていました(恥)。
でも、そこに留まっていては、商標の本来の価値は1ミリも発揮されません。今回は、商標登録を「取って終わり」にしないための考え方をお伝えします。

商標登録証を手にしただけで、喜んでしまっていませんか?

はっきり言います。登録のために使った費用すら、回収できないと思いますよ。

「とりあえず商標は取った。でも売上には繋がっていない」。もし、そう感じているなら、商標の使い方を間違えている可能性があります。

目次

そもそも、何のために商標登録するんですか?

先日、ある相談者さんが、僕と話した後で「今回は商標登録をしない」と決断されました。僕は、賢明な判断だと思いました。

登録の可能性が低かったからではありません。「商標登録をするにはまだ機が熟していないな」と感じたからです。

「商標登録をした方がいいと言われたので」。そんな理由で相談に来られる方も少なくありません。でも、「した方がいい」と勧めたのは誰ですか? 多くは起業塾の先生や、先に起業した先輩。知財の専門家ではない人たちです。

「他人に言われたから」というフワフワした気持ちで商標登録の手続きを進めると、たとえ登録に成功しても「ただの自己満足」に終わること請け合いです。

商標登録は事業の一環であり、先行投資です。せっかくお金をかけるなら、その投資をしっかり回収しましょう。そのためには、「自分は何のために商標登録をするのか」を自問自答することから始めてみましょう。

商標は「守り」のツールではなく、「攻め」のツール

商標登録の相談に来られる方の多くが、こんなセリフを口にします。

「誰にも真似されたくない」「使えなくなったら困る」

これ、どちらも他人からの攻撃から自分の身を守るために、商標登録という盾を使いたいと言っているんですよね。商標登録を「守りのツール」あるいは「保険」と考えているわけです。

先日、近畿経済産業局主催のアトツギ経営者さん向けのセミナーで、受講者の皆さんにこんな問いかけをしました。

「商標登録の経験はありますか?」

半数以上の方が元気よく手を挙げてくれました。ところが、「その商標登録で、どんな事業上のメリットがありましたか?」と聞くと、会場はシーン…。皆さん俯いて、僕と目が合わないようにしていました(笑)

「とりあえず商標登録をして、何となく安心している」。これが、多くの中小企業の実態なんじゃないでしょうか。

でも、考えてみてください。守っているだけでは試合に勝てませんよね? それに、守り一辺倒で耐え忍ぶだけのゲームなんて、面白くなくないですか?

商標には、「守り」だけでなく「攻め」のツールとしての側面があります。殆どの人は、この「攻め」の部分を捨ててしまっている。商標の美味しいところの半分を使っていません。これは本当にもったいない。

商標は、登録した後の「攻めの活用」をしてこそ、価値を生みだすものなんです。

商標登録は「ブランディングサイクル」の一部にすぎない

では、商標を「攻め」に使うとはどういうことか? 商標登録を、3つのステップの真ん中に位置づけてみてください。

  • ①作る(Create):まず3C分析(自社・競合・顧客)で「ここなら勝てる」という場所を見つけ、コンセプトを固めて言語化する。ここが抜けると、商標権が事業内容から乖離して宙に浮いてしまいます。
  • ②護る(Protect):練り込んだコンセプト・ワードを商標登録で護る。戦略に基づいて設計した権利だからこそ、護る価値があります。
  • ③育てる(Nurture):商標は登録してからがスタート。一貫して使い続け、商標の上に顧客からの信用を蓄積していく。

このように、②の「護る」(商標登録)は「ブランディングサイクル」の一部にすぎません。それなのに、多くの人は②だけで満足してしまう。でも、その前後の「作る」と「育てる」を一貫してやって初めて、ブランディングサイクルが回り、強いブランドができるんです。

なぜ「育てる」価値があるのか。商標の特別な性質

「有限の価値を、永続する資産へ」と題した図解。左側に砂時計が描かれ「製品・技術(特許)/権利期間:有限」、右側に葉の茂った大樹が描かれ「ブランド(商標)/権利期間:半永久的」。砂時計から大樹へ向かって金色の「信用(Trust)」が流れていく様子で、特許で得た有限の信用を、永続的に更新できる商標という器に移し替えることが持続的成長の鍵だと表現。NotebookLMで作成。
※画像はAI(NotebookLM)で生成

「育てる」と言われても、ピンとこないかもしれません。でも、商標には「育てる」に値する、特別な性質があります。

どんなに優れた商品でも、いつかは旬の時期をすぎ、寿命を迎えます。商品は有限ということです。でも、その商品で築き上げたお客様からの「信用」まで一緒に失うのは、もったいないと思いませんか?

商標(ネーミングやロゴマーク)は、その信用を受け止める器のような役割を果たします。しかも商標権は、10年ごとに更新さえすれば半永久的に持ち続けられる権利

ここが、特許との決定的な違いです。

特許の権利期間は20年。技術は必ず古くなり陳腐化します。古くなった権利に価値はありません。だから、権利を消滅させて誰でもその技術を使えるようにしています(ジェネリック医薬品など)。特許の価値は砂時計の砂のように、刻一刻と落ち続け、いつかゼロになるということです。

一方、商標は半永久的に生き続ける樹木のようなものです。積み上げた信用の水を注ぎ続ければ、やがて大樹に育つ。世代を超えて根を張っていくんです。

有限の価値(商品)を、永続する資産(商標権)へ。これが、商標を「育てる」ことの意味です。

「育てる」の第一歩は、登録後の「管理」から


2本の黒い油性マーカーを上下に並べた比較画像。上は本物の「マッキー」、下は激似のフォントで「マツキニ」と書かれた模倣品。「Amazonで買った『マッキー』が、よく見たら『マツキニ』だった件」という見出しと、あるイラストレーターのX投稿で話題になった経緯の説明文付き。流行品への便乗・模倣のリスクを示す事例。NotebookLMで作成。
※画像はAI(NotebookLM)で生成

最後に、すぐにできる具体的なアクションをお伝えします。

2026年1月、あるイラストレーターがAmazonで油性マーカー「マッキー」を買ったところ、よく見たら「マツキニ」という激似のフォントのバッタもんだった、という話が話題になりました。写真を見ると、完全に「マッキー」に寄せにいっていました(苦笑)

このように、流行り物やヒット商品には便乗してくる人が現れます。「ひどい奴がいるね」と他人事に思っているそこのあなた。商標登録をしたからといって安心していると、自分もやられる立場になるんですよ!

商標を登録した後にほったらかしにしている人が多いです。でも、権利は取った後の「管理」と「活用」が大事。

まずは、自分の商標を「エゴサーチ」してみてください。自分の商標をググってみて、誰か勝手に使っている人はいないか。そして、検索リストの一番上に自分が出てくるか。

  • 誰かが勝手に使っているなら → 商標の管理が不十分
  • 検索の一番に出てこないなら → 商標の活用が不十分

まとめ:登録はゴールじゃなく、スタート

商標登録証は、記念の賞状ではありません。棚に飾って満足するものではない。

商標は、お客様からの信用を「見える化」し、大きく育てていくための「事業上の武器」です。武器は、磨き上げて実戦で使ってこそ価値が出てきます。

  • 作る:3C分析でコンセプトを固め、言語化する
  • 護る:戦略に基づいて設計した権利を商標登録で護る
  • 育てる:使い続けて信用を蓄積し、ブランドを育てる

あなたの商標、眠らせたままにしていませんか? 「取って終わり」にせず、作る・護る・育てるのブランディングサイクルを回していきましょう。それが、5年後・10年後のブランド資産につながります。

商標登録の考え方については、「良いネーミング」の誤解を解く。売れる名前には理屈があるもあわせてお読みください。ネーミングと商標登録は、本来ひとつながりの戦略です。

ニュースレターの配信を始めました!

ネームチェンジャー ヤマダのニュースレターを購読してみませんか?
最新記事のお知らせや限定コラムはニュースレターでお届けしています!

目次