その名前、もう他人に商標登録されてるかも…。から逆転劇。商標『biziblize(ビジブライズ)』の誕生秘話

原石から現れた金のダイヤと、タイトル「ピンチをチャンスに変えるネームチェンジャーの視点」のアイキャッチ

※アイキャッチ画像はAI(NotebookLM)で生成

あなたが時間をかけて練り上げた名前。さぁこの名前で頑張ろう!と思った矢先に、「それ、他の人が登録していますよ」と言われたら、どうします?

うちの事務所で扱った事例です。あるサービスの名前の商標登録を依頼されたんですが、調べてみたら既に他の人が商標登録をしていました。普通はここで諦めて、全く別の名前を考えます。でも、この会社は別の方法でこのピンチをクリアしました。

今日はピンチをチャンスに変えて、良いネーミングをゲットした、ネーミングと商標のお話です。

目次

「bizible」と「Visible」は、別の名前か?

天秤に乗った金のbizibleと銀のVisible。「別の名前か?」と問う図
※ 画像はAI(NotebookLM)で生成

ある会社が、新しいサービスに「bizible(ビジブル)」という名前をつけようとしていました。

「biz(ビジネス)」と「visible(見える)」を掛け合わせた造語です。現場の業務をありのままに「見える化」するサービス。短く語感もいい。サービスの内容もイメージできる。良い名前だと思います。

依頼者の方は、「Visible」という商標があることは噂に聞いていたようです。ただ、「bizible は Visible とは綴りも意味も違う。だから問題ないだろう」。皆さんもそう思うんじゃないですか?

ここで、私のところに相談がありました。「bizible」を商標登録したい、と。そこで、「bizible」が商標登録できそうか、私が商標の調査をすることになったんです。

見た目も意味も違う。なのに、商標としては”同じ”

外観・観念・称呼の3つの輪で、称呼(音)が赤く強調された商標類否の図
※ 画像はAI(NotebookLM)で生成

で、調べてみたんですが、やはりあの商標がヒットしてきました。「Visible」が商標登録されていたんです。「ビジブル」という音が全く同じ。しかも、商標を使おうとしているサービス(経営に関する助言や、セミナーの開催など)もほぼほぼ同じ…。

いやいや、「bizible」と「Visible」は綴りが違うじゃん。こっちはビジネスを可視化するという意味、向こうはただの可視化でしょ?

そう思う人が大半だと思います。でも、商標の世界では商標が似ているかどうかを比べる時に、外観(見た目)、称呼(音)、観念(意味)の3つの要素で見て、その一つでも似ていれば商標全体として似ていると判断されるケースもあるんです。

これは私の体感値ですが、特許庁は商標同士が似ているかどうかを判断する際に、「称呼(音)」を重視していると感じます。「bizible」も「Visible」も、声に出せば同じ「ビジブル」。綴りが違っても、意味が違っても、口にした音が同じだと、アウトになる可能性があるわけです。

「bizible」を出願した場合、登録される可能性はゼロではないけど成功率は低め。登録するのは簡単ではない。それだけではなく、登録されないまま使えば、「Visible」の商標権を侵害してしまうおそれもあります。

一般的な感覚での「似ている似ていない」と、法律上の「似ている似ていない」は違うということです。

普通なら、ここで名前を捨てる

ゴミ箱に赤い×で捨てられる金色の「bizible」。普通ならここで名前を捨てる図
※ 画像はAI(NotebookLM)で生成

こういうとき、普通の弁理士は「残念ながら他の人が商標登録しているので、別の名前を考えましょう」とアドバイスします。

コピーライターさんのようなネーミングを仕事にしている人もそうではないでしょうか?

ただ、それだとせっかく練り上げてきた「bizible」という名前を捨ててしまうことになります。「bizible」は、現場の業務をありのままに「見える化」するというサービスイメージを上手く表現しています。悪くない。ただ捨ててしまうのはもったいない!

私は、名前を”モディファイ(改造)”することを提案した

金属塊をタガネで精密に削り火花が散る、「第3の道」の図
※ 画像はAI(NotebookLM)で生成

ということで、私は第三の道を提案しました。

名前をただ捨ててしまうのではなく、可能性が低いままダメ元で商標登録にチャレンジするのでもなく、名前の素材の良さを活かして一部だけ改造する。具体的には、語感を残したまま、語尾だけを改造することを依頼者への宿題としました。

ここで、依頼者の方が次の案として持ってきたのが、「biziblize(ビジブライズ)」でした。「bizible(ビジブル)」は、”ビジネスが見える化された”という状態を表す形容詞です。これを「biziblize」、”見える化する”という動詞っぽい表現に改造されています。

「bizible」と「biziblize」。初めに考えたニュアンスは語頭に残しつつ、語尾を変化させて全体の印象を激変させました。音の数、響きが全く別物となった。それだけでなく、動詞的な表現としたことで、言葉に躍動感が出てきました。

これならイケる!

こうして、出願に至った「biziblize」はその後無事に商標登録されました(商標登録第6368607号)。他社の先行商標とのバッティングという災いを転じて、元の名前より良い名前になったという福となしたわけです。

「いい名前」と「商標登録」は、セットでしか効かない

金(ネーミング)と銀(商標)のメビウスの輪。「ネーミングと商標登録はセット」の図
※ 画像はAI(NotebookLM)で生成

この記事でお伝えしたいのは、思いついた名前をそのまま商標登録するだけでは、もったいないということです。名前は、商標登録まで見据えて練った人ほど、強くなる

自分が良い名前を思いついたと思っても、それが他人の商標とぶつかっていたら使えない。最悪、商標権侵害で訴えられる。逆に、商標の知識があれば、事前に衝突を回避しながらより良いネーミングに考え直すチャンスがある。

名前(商標)を実際にマーケットに置くこと(商標の活用)を前提にして名前を設計し、商標登録することが大事なんです。これが頭に入っているかどうかで、その後の結果が大きく変わってくるんですよ。

因みに、私が名前を考えるときは、いつもこの順番で進めます。

  • まず、使おうとしている名前を調査する
  • 少しでも似ている先行商標があれば、商標権侵害にならないかを確認する
  • 商標権侵害になる可能性があれば、その名前を使うのはいったん止める
  • 当初の名前の案の語感やイメージを残したまま、先行商標を回避してリネームできないか検討する
  • それが無理なら、全く別の名前を考える

こういうやり方をすれば、無駄が少なく、最初の要望に合った名前を商標登録できる可能性が膨らみます。

当所では、ただ決まった名前をそのまま商標登録の手続きに移すだけの仕事はしていません。事前の調査結果を踏まえて、「名前を改造する」といったオプションも用意しています。弁理士であり、ネームチェンジャー®としてネーミングにも精通している私だからこそ、こういう芸当ができるわけです。

あなたが今、使おうとして温めている名前。それは、本当に”あなたのもの”ですか?

商標登録をする段になって、「実は他人の商標でした」と気づくのと、名前を検討する段階で気づいて、よりよい名前に改造し、可能性を高めて商標登録に臨む。どちらがいいかは、一目瞭然ですね。

開いた金庫に輝く文字ブロック。「その名前は本当にあなたのものか」と問う図
※ 画像はAI(NotebookLM)で生成

私のニュースレター「ネームチェンジャー®の視点」では、今回のような「名前を”会社の資産”にする」「名前を起点に事業を伸ばす」話を、継続的にお届けしています。もしご興味がある方はご登録を。

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