はじめに
先日、ピコ太郎の「PPAP」をちゃっかり先取り出願しちゃった、あのお方がまたやってくれました。今度は、政府肝いりの「プレミアムフライデー」が毒牙にかかりました…(嘆)
「PPAP」の次は「プレミアムフライデー」が毒牙に…
先日、ピコ太郎とは全く無関係の会社が商標「PPAP」を出願している件について紹介しました(1,2,*3)。この商標の出願人は元・弁理士のU氏が代表を務めるB社です。このB社が、政府肝いりで始まった「プレミアムフライデー」についても商標登録の出願をしていたことがわかりました。
「プレミアムフライデー」について検索をかけてみたところ、以下2件の文字商標がヒットしました(経済産業大臣はこの他にロゴマークも2件出願しています)。
● 商願2016-088273「PREMIUM FRIDAY」
出願人:B社、出願日:2016/08/13
● 商願2016-088421「PREMIUM FRIDAY」
出願人:経済産業大臣、出願日:2016/08/13
同日出願ですね。出願番号から見て、B社の方が先に出願しています。しかもこの2つの出願は指定した商品・サービスの範囲も重複しています。
(引用元:特許情報プラットフォーム<J-PlatPat>)
経済産業省さん、迂闊すぎるんじゃないの?!
何故、今回、B社が経済産業大臣より先に出願することができたんでしょうか?
経済産業省が「プレミアムフライデー」の構想を公にする前に商標を出願しておけば何の問題もなかったはずです。さすがのU氏も「プレミアムフライデー」のことを知らなければ出願はできませんからね。
不思議に思って調べてみたら、こんなニュースがヒットしました。
[blogcard url=”http://www.sankei.com/economy/news/160812/ecn1608120033-n1.html”]
このニュースが配信されているのが、2016年8月13日の朝5時。ベストライセンス社と経済産業大臣が商標を出願した、まさにその日です。おそらくU氏はこの日(若しくはその前日)のニュースで「プレミアムフライデー」のことを知って、すぐに出願したんでしょうねぇ…(嘆)
経済産業省さん! なんで情報を公開する前に出願しておかなかったのよ?! あまりに迂闊すぎるんじゃないの?!
今回のケースは普通にやっていれば、先取り出願をされることを防げたケースだと思います。因みに、経済産業省は特許庁を管轄している省です。しっかりしてくださいよ…。
今後、この2つの出願はどう扱われるのか?
商標は早い者勝ちの世界です。そして、B社の出願は、経済産業大臣の出願より先に出願されています。だから、B社が無条件で商標登録をgetできるかと思いきや、そうではありません。2つの出願は同じ日に出願されているので、「出願日」という点では優劣がつかないのです(出願の先後は時刻までは見ない)。
ではどうするかというと、特許庁の審査官は、まずB社と経済産業大臣に協議するよう命令を出します。両者に話し合ってもらって、どちらか一方が諦めるように促すわけです。
どっちも諦めなかったらどうなるか。今度はなんと「くじ引き」をします!
商標法には、協議が成立しなかった場合、指定した期間内に協議結果の届け出がなかった場合には、
特許庁長官が行う公正な方法によるくじにより定めた一の商標登録出願人のみが商標登録を受けることができる。
と規定されているのです(商標法第8条第5項)。このくじ引き制度は商標法固有の規定です。特許法、実用新案法、意匠法にはありません。かなり特殊な規定なんです。
まとめ
経済産業省、やっちゃいましたね…。完全なポカだと思います。プレスリリースした後に出願してるようではダメでしょう。
B社は「北陸新幹線」等も出願してしまう会社です。そういう会社があることを前提に動かないと、こういうトラブルに巻き込まれるということです。
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