※アイキャッチ画像はAI(NotebookLM)で生成
「断捨離、しなきゃ〜!」
日常会話でごく普通に使われているこの言葉。実は登録商標です。知ってましたか?
「えっ!そうなの?」と思った方はご用心。知らずに使い続けていると、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性がありますから。
「断捨離」は、やましたひでこさんの登録商標

「断捨離」は、やましたひでこさんが提唱した片付けの概念です。2009年に著書『新・片づけ術「断捨離」』が大ヒット。2010年の流行語大賞も受賞したことで、この言葉が多くの人に知られるようになりました。
そして、やましたさんはこの「断捨離」を、複数の商品・サービスの区分(ジャンル)で、複数の商標登録をしています(本名の山下英子さん名義)。
| 商標登録番号 | 商標 | 商品・役務の区分 |
|---|---|---|
| 4787094 | 「断捨離」(標準文字) | 第41類(知識の教授;等) |
| 5412928 | 「断捨離」(標準文字) | 第9類(電子出版物;等)、第16類(印刷物;等) |
| 5582468 | 「断捨離」(標準文字) | 第3類(せっけん類;等) |
| 5909022 | 「断捨離」 | 第5類(薬剤;等)、第7類(電気掃除機;等)、第11類(ごみ焼却炉;等)、第21類(清掃用具及び洗濯用具;等)、第28類(おもちゃ;等)、第29類(肉製品;等)、第30類(菓子;等)、第31類(野菜;等)、第32類(清涼飲料;等)、第37類(洗濯;等)、第42類(電子計算機用プログラムの提供;等)、第43類(飲食物の提供;等)、第45類(占い;等) |
| 5948115 | 「断捨離」 | 第14類(身飾品;等)、第18類(かばん類;等)、第20類(家具;等)、第24類(布団;等)、第25類(被服;等)、第35類(広告業;等)、第36類(預金の受入れ;等) |
| 6367114 | 「断捨離」 | 第44類(美容;等) |
かなり広い範囲の商品・サービスにわたって商標権を押さえていることがわかります。
実際に起きたトラブル。「知らなかった」では済まされない

登録商標「断捨離」については、今までにいくつかのトラブルが起きています。
日本テレビ系の深夜番組「ナカイの窓」
かの中居正広さんが司会を務めていた人気番組の中に「断捨離の窓」というコーナーがありました。このコーナーに対して、やましたさんサイドから「断捨離」という語の使用を控えるようクレームが入りました。
→ 『ナカイの窓』が「断捨離」使用でトラブル、終了にも影響か|NEWSポストセブン
YouTuberのMinimalist Takeruさん
ミニマリスト系YouTuberのMinimalist Takeruさんは、タイトルや内容に「断捨離」を使った動画の削除、ハッシュタグ「#断捨離」の削除、今後の使用禁止を求められました。
→ 【ミニマリスト注意】商標権の侵害で動画450本を削除した件を弁護士に相談した結果。|YouTube
ブロガーのayakoさん
シンプルライフを提唱するブロガーのayakoさんは、ブログ内の「断捨離」という表示の削除を求められました。
→ 最近、衝撃だったことです|X(ayako | 暮らしと家庭学習を整える)
テレビ局から個人のブログまで。幅広い範囲でトラブルが起こっています。ここに挙げた以外にもあったかもしれません。
「まさか自分のブログにクレームが来るとは!」と思った人もいたんじゃないですか?
でも、商標法は「知らなかった」「悪意はなかった」という言い訳を認めてはくれません。
おそらく、やましたさんは商標登録第4787094号(第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授」)を根拠として警告を行ったのではないかと推察します。YouTuberやブロガーが「断捨離」という言葉を表示し、片付けについてアドバイスをする活動が「知識の教授」に当たると考えたのでしょう。
商標権の効力。何が禁止されるのか?

商標権は、実は2つの権利でできています。専用権と禁止権と言います。
専用権は、登録商標を独占的に(自分だけが)使える権利です。「独占」ですから、他の人の使用を禁止することもできます。
ただし、専用権の範囲は登録商標と同一の商標、商標登録をする時に指定した商品やサービス(指定商品・指定サービス)についてだけです。
禁止権は、専用権より広い範囲で、他の人が商標を使用することを禁止することができる権利です。「使用することを禁止」なので、その広い範囲で自分が商標を使えることを保証する権利ではありません。
禁止権は、商標や商品・サービスの両方が全く同じでなくてもいいんです。
- 商標が同一|商品・サービス類似(似ている)
- 商標が類似(似ている)|商品・サービスが同一
- 商標が類似(似ている)|商品・サービス類似(似ている)
この3パターンは禁止権の範囲に含まれます。
それと、勘違いしている人が多いんですが、商標登録された言葉が全く使えなくなるわけではありません。商標権は特定の商品・サービスに対して商標を使う権利・使わせない権利です。
ですから、たとえ商標登録をされた言葉でも、商標登録で指定されている商品やサービスとは無関係な商品やサービスについてはその言葉を使っても構わないんです。無関係な商品やサービスであれば、商標登録できてしまう可能性だってあります。
例えば…。私の事務所の屋号は「クロスリンク」です。
商標登録しようとしたら、私より先に、「CROSS LINK/クロスリンク」という商標を登録している人がいたんですよ。こちらは眼鏡屋さん。でも、第9類「眼鏡」と、第45類「知的財産権に関する手続の代理」では商品・サービスのジャンルが違うので、私の「クロスリンク」も無事登録されています。

「『断捨離』はもう普通名称だから使っていい」という主張は正しいのか?

この事件が話題になった時、ネット上でこんな意見が見られました。
「断捨離はもう普通名称化している」「それなのに、商標権を振りかざすのはおかしい」
商標権はその商標(名前)が商品やサービスの一般的な名称として認識されるようになってしまうと(「普通名称化」と言います)、権利の効力を失います。
商標はその商品やサービスが、誰かの商品・サービスであることを示す目印・シンボルです。その商標が表示されているのに、誰の商品・サービスかがわからないような名前はそもそも商標とは言えないんです。
過去にも普通名称化の例はたくさんあります。例えば、「エスカレーター」、「ホッチキス」、「ナイロン」や「テフロン」……。これらは元々は特定の企業の商標でした。でも、今ではその種類の商品を示す普通名称として使われています。もはや登録商標ではなくなったと言っていい。
では、「断捨離」はどうでしょうか?
「断捨離」という言葉を聞いて、「何か特定の商品が思い浮かぶか?」というとそうではありません。あくまで、「片付けの概念」として知られているだけです。そうすると、上に挙げた「普通名称化」の例とは違いますね。
また、「断捨離」と聞いて、「やましたさんが広めた、あれね!」と記憶している人もいます。「断捨離」という名前がついた商品やサービスをやましたさんが提供しているものだと考える人も一定数はいる、「断捨離」は未だ商標として機能しているとも言えます。
そうすると、「『断捨離』はもう普通名称だから使っていい」とまでは言えないのではないかというのが私の見解です。
ただ、商標は商売の標識です。商売とは関係ない日常会話で、「昨日、『断捨離』しちゃった!」と言っても商標権侵害にはなりません。そこはご安心を。
商標の使用義務を忘れずに

商標は登録したら終わり、ではありません。登録商標には使用義務が課されます。登録したら使わないといけないということです。
3年以上、日本国内で指定商品や指定サービスに登録商標を使用していない場合、第三者は特許庁に対し商標登録の取り消しを求めることができます。いわゆる、「不使用取消審判」です。
「断捨離」の商標登録の中には、明らかにやましたさんのビジネスとは無関係と思われる商品・サービスがたくさん存在しています。本当に使用されているかどうかは、かなり疑問です。
ですから、商標権侵害と警告が来ても、不使用取消審判を請求して対抗することは可能です。商標登録をなくしてしまえば、その後の商標権侵害はなくなるわけですから。
このことは、私たちにとっても他人事ではありません。皆さんも商標登録が済んだからといって安心しないでください。
- 商標登録の時に指定した商品やサービスに商標を使っているか?
- 使っている商標は登録商標と同じものか?
これらを自分たちで定期的に確認する、必要に応じて弁理士と一緒に確認することをお勧めします。
まとめ。自分ごととして考えてほしいこと
今回の「断捨離」トラブルから学べることは、3つです。
- ①普通名称のように見えても、商標登録されている言葉がある
「断捨離」だけでなく、「ボクササイズ」「宅急便」なども同様です。気になる言葉は特許情報プラットフォームで調べる習慣をつけましょう。 - ②個人のブログやYouTubeチャンネルにも商標権は及ぶことがある
広告収益やアフィリエイト収入を得ている場合、「商業的な活動」と見なされるケースがあります。チャンネル名やブログタイトルには特に注意が必要です。 - ③商標登録は「取って終わり」ではない
登録後も商標の適切な使用を心がけること。それができているかどうかの確認をすること。そしてもう一つ。商標権の権利切れにならないように、登録料の納付期限を忘れないことが大事です。税金みたいに特許庁から納付のお知らせはきませんから。
「断捨離」の事例は他人事ではありません。あなたのブログ、YouTubeチャンネル、SNSアカウントのタイトルにも、思わぬ落とし穴が潜んでいるかもしれません。今一度、見直してみてください。

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