明治「おいしい牛乳」を例に、商品のパッケージデザインの作り方を解説します。商品パッケージは商品よりも先に消費者が触れるタッチポイント。消費者の興味を惹き、商品を手に取ってもらうためのパッケージデザインのポイントを弁理士がわかりやすく解説します!
コンビニの冷蔵棚です。「いつもの牛乳がない!」と思ったらありました。
左から3番目、写真中央のあたりにノンブランドの成分無調整牛乳があります。どうやらデザインが変更されたようです。
でも、このデザイン…。とても牛乳には見えません。薄茶色のカラーリングで、コーヒー牛乳のイメージです。それと比べると、その左隣にある明治「おいしい牛乳」のデザインはわかりやすい!誰もが「牛乳」と一瞬で認識することができる牛乳らしいパッケージです。牛乳を買いに来た人なら、こっちを手に取ってしまいます。
実際、明治「おいしい牛乳」のパッケージデザインは良くできています。これを分析すれば、商品のパッケージデザインの作り方に辿り着けそうです。
商品のパッケージデザインの作り方 3つのポイント
明治「おいしい牛乳」のパッケージデザインをつぶさに観察しました。その結果、商品のパッケージデザインの作り方のポイントは以下の3つと考えています。
- 商品の内容や種類を伝える
- 商品の魅力を伝える
- 見る人の視線を動かす
商品の内容や種類を伝える
パッケージの第1の役割はそのパッケージの中身の商品がどんな商品かを伝えること。お客様が間違えることなく、求めている商品に的確にたどり着けるように誘導する必要があります。
「おいしい牛乳」のパッケージは、ひと目で「牛乳」とわかるデザインです。
- 白を基調にした「牛乳」をイメージさせるカラーリング
- 大きく見やすい「おいしい牛乳」の文字
- グラスに「牛乳」を注ぎ込んでいる写真
とても「牛乳」らしいパッケージです。商品が牛乳であることは一目瞭然です。
これに対し、先程の写真に出てきたノンブランドの成分無調整牛乳のパッケージ。
- ベージュ(薄茶)を基調にした「コーヒー牛乳」や「カフェオレ」をイメージさせるカラーリング
- 小さくて読みにくい「成分無調整牛乳」の文字
- 背景に埋没してしまっているミルク缶のイラスト
牛乳のパッケージは白。長年、刷り込まれてきたイメージはそう簡単には覆せません。
- 斬新さを出したい
- インパクトを出したい
- 他社商品と差別化したい
そんな思いが先走ってしまうと、おかしなデザインのパッケージができあがります。「うちはナチュラルなイメージで売りたいから、生成りっぽい色にしたんだ!」と言ったって、買う人はそうは思ってくれないんです。
商品の魅力を伝える
パッケージの第2の役割は中身の商品の魅力を伝えること。お客様はパッケージを開けるまで商品に触れることができません。それでも買いたくなるようにパッケージだけで商品の魅力を伝える必要があります。
「おいしい牛乳」のパッケージは、
- 白と青を基調にしたさわやかなカラーリング
- 「おいしい」の大きな文字
- 勢いよく牛乳を注ぎ込んでいる動きのある写真
によって、
- 牛乳の新鮮さ・フレッシュさ
- ピュアでヘルシーなイメージ
- 牛乳のおいしさ
等をうまく表現しています。
一方、ノンブランドの成分無調整牛乳のパッケージは、
- ベージュ(薄茶)を基調にしたカラーリング
が、
- 牛乳以外の副成分(例えばコーヒーや砂糖)
- 健康飲料ではなく嗜好飲料
をイメージさせ、商品の購入をためらわせることにもなりかねません。
見る人の視線を動かす
パッケージの第3の役割は見る人の視線をぐるぐると動かし、飽きさせないこと。
パッケージデザインは色々な要素で作られています。例えば、
- ブランド名
- 商品名
- 図形
- 写真
等です。
これらの要素を意図的に配置することによって、見る人の視線を動かし飽きさせないようにすることができます。また、パッケージデザインから自分達の意図を読み取ってもらうことが可能となります。
「おいしい牛乳」のパッケージではその一番上に、
- 「meiji」
- 「明治」
という「ブランド名」が表示されています。
牛乳はコンビニやスーパーの商品棚の一番下段に置かれていることが多いですよね。見る人はパッケージを上方から見下ろしています。だから、商品を購入してもらう上で一番大事な「ブランド名」をパッケージの上部に表示しているのです。
そして、「おいしい牛乳」のパッケージには見る人の視線を動かすための仕掛けがされています。
- 「meiji」と「明治」の間の円弧状の曲線は下向きに伸びている
- 「おいしい牛乳」の文字は縦書きで、下に向かって文章を読むように文字が配置されている
- 背景写真では牛乳が上から下に向かって注がれている
これらの仕掛けで下向きの流れを作り出し、見る人は上から下に向かってパッケージを見るように誘導されます。見る人はまず「ブランド名」が目に入り、次に「商品名」を認識するように誘導されるわけです。
一方、ノンブランドの成分無調整牛乳のパッケージの方は、
- デザインの要素同士が連関しておらず、バラバラに配置されている
- 見る人の視線をデザインの要素から要素へ動かすことができていない
と言えます。ただ説明が表示されているだけで面白くないのです。これだと、なかなか商品に手を伸ばしてもらいにくいのではないかと想像します。
商品のパッケージデザインの作り方|まとめ
今日は、「おいしい牛乳」のパッケージデザインを例に、商品のパッケージデザインの作り方を考えてみました。
商品のパッケージデザインを作る時のポイントは、
- 商品の内容や種類を伝える
- 商品の魅力を伝える
- 見る人の視線を動かす
です。
商品パッケージは商品よりも先に消費者が触れるタッチポイントです。商品の中身に触れなくても、見るだけで消費者の興味を惹き、商品を手に取ってもらえるようなパッケージデザインを作っていきましょう!
関連記事:「おいしい牛乳」のネーミングについて
「おいしい牛乳」のパッケージデザイン。非常に良くできていますね!
しかし、「おいしい牛乳」というネーミングについては商標登録が認められませんでした。商標登録に必要な「識別力」がないネーミングだからです。でも、明治と森永はある方法を使って、「おいしい牛乳」の商標登録に成功しています。詳しくはこちらの記事を読んでみてください。
「おいしい牛乳」が商標登録されない理由。明治と森永が商標登録できた理由
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