スターバックスのロゴマークは何度かの変遷を経て今のロゴマークになっています。スタバのロゴは時代とともに徐々にデザインが変更されているのです。この記事ではスタバのロゴマークが変更された意味を紐解き、そこからロゴマークの作り方を考えてみます。
スターバックス ロゴの変遷
スターバックスのロゴ(ロゴマーク・シンボルマーク)は何度か変更されています。
- 1971年バージョン(左上)
- 1987年バージョン(右上)
- 1992年バージョン(左下)
- 2011年バージョン(右下)
ここには4つのバージョンが示されています。
スターバックスのロゴマークは時代とともに洗練され、シンプル化が進んでいることがわかります。スターバックスは自らの知名度の上昇、企業規模の拡大を考慮し、ロゴマークの見直しをしているのです。
スターバックス ロゴ変遷の意味
スターバックスのロゴマークは時代が進み、新しくなるにつれて、
- 文字数が減少している
- シンボルが抽象化されている
- イメージカラーが強調されている
と、言えます。
文字数の減少
スタバのロゴマークは時代が進むにつれて文字数が減少しています。
①1971年バージョンには屋号の「STARBUCKS」の他、取扱商品である「COFFEE」、「TEA」、「SPICES」の文字があります。
②1987年バージョンでは取扱商品の表示から「TEA」、「SPICES」の文字がなくなり、「COFFEE」だけになりました。
④2011年バージョンでは「STARBUCKS」、「COFFEE」の文字すらなくなっています。
シンボルの抽象化
スタバのロゴマークは新しくなるごとにシンボルが抽象化されています。
スタバのロゴマークのシンボル(象徴)は「セイレーン(尾の部分が二又に分かれた半人半魚の怪物)」です。
①1971年バージョンではセイレーンがかなり具体的に表現されています。ちょっとおどろおどろしい感じもします。
②1987年バージョンではセイレーンが抽象化され、イラスト的に表現されています。怪物的な要素が減って、人魚的な要素が増えたことで、親しみやすいデザインになっています。
③1992年バージョンではセイレーンの姿が全身像からバストアップの画像に変更されました。②1987年バージョンより更にセイレーンの怪物的要素が削られています。二又の尾はチラ見えしていますが、「長い髪の女性」、「王冠」のイメージの方が強くなりました。
イメージカラーの強調
スタバのロゴマークは徐々にイメージカラーであるグリーンの占める割合が増えています。
①1971年バージョンではロゴマークはブラウン単色。一昔前の古びたイメージです。
②1987年バージョンではセイレーンを囲むドーナツ状の部分がグリーンに彩色されました。セイレーンの背景色・ブラックとのコントラストが印象的なロゴになりました。
④2011年バージョンではセイレーンを囲むドーナツ状の部分がなくなり、セイレーンの背景色がブラックからグリーンに変更されました。ロゴマークからブラックの部分がなくなり、グリーン一色になりました。
スターバックスのロゴ変遷から学ぶロゴマークの作り方
スタバのロゴ変遷から、ロゴマークの作り方を考えてみます。
伝えるメッセージは1つだけ
スタバのロゴマークは時代を追うに連れ、文字数が減少しています。これはメッセージがシンプルになっていることを意味します。
最初は「COFFEE」、「TEA」、「SPICES」と3つの商品を推していました。それが主力商品の「COFFEE」だけを表示するようになりました。
ロゴマークを見るのは一瞬です。その一瞬で伝えられる情報量は限られています。だから、伝えるメッセージは1つだけ。「ワンメッセージ」です。
あれも言いたい。これも伝えたい。気持ちはわかりますよ(笑)
でも、メッセージをギュウギュウ詰め込むとイメージが発散してしまいます。何も印象に残らないんです。
私もロゴマークの商標登録について相談されることがありますが、皆さん情報を詰め込みすぎなんですよね。ロゴマークの中にごちゃごちゃ説明を書いても読んでもらえません。思い切ってメッセージを一つに絞りましょう。
ところで、スタバのロゴは最後には文字が全くなくなっています。でもこれはスタバの認知度のなせる技です。セイレーンのイラストを見ればスタバという認知が取れているからです。
スタバはコーヒーではなく、職場でも家庭でもない第三の場所(third place)を提供しているとも言われています。そうすると、「COFFEE」の文字すら不要なメッセージなのかもしれません。もはや、屋号や商品の説明も要らないほど、スターバックスは著名なブランドになったということです。
スタバのような文字なしロゴマークは難易度が高くなります。最初はワンメッセージをおすすめします。
シンボルをアイコン化する
スタバのロゴマークのシンボル「セイレーン」は徐々に抽象化され、イラスト的・アイコン的に表現されるようになりました。これも文字数の減少と同様、伝える情報を削ぎ落としていると言えます。
①1971年バージョンのロゴマークではセイレーンが写実的に表現されています。細かい部分までかなり具体的に表現されていますよね。でも、伝えたいのはセイレーンの姿態ではなく、セイレーンに秘められたイメージです。
スターバックス公式の「スターバックスストーリーズジャパン」には以下のような記載があります。
ギリシャ神話に登場するサイレンは、美しい歌声で船乗りを誘惑し、心を奪ったとされる人魚。その物語になぞらえ、「コーヒーの香りで道行く人々を魅了したい」という想いをロゴマークに託しました。
あなたは誰?スターバックスの永遠のシンボル 「サイレン」のストーリー|スターバックス ストーリーズ ジャパン
この想い、裏側にあるストーリーを象徴的に伝えるキャラクターとしてセイレーンを採用しているだけなんですね。セイレーンがどんな生き物かを伝えたいわけではないので、写実的に表現する必要はないわけです。
セイレーンを写実的におどろおどろしく描いてしまうと、そっちが気になって他の情報が入ってこなくなります。なので、象徴となるキャラクターはシンプルにアイコン化する。そこに、「セイレーンらしきもの」がいればいいのです(笑)
写真や写実的なイラストでシンボルを具体的に表現しすぎると特定のイメージに紐付けられてしまいます。イメージが固定化され、広がりがありません。
シンボルをアイコン化した方が色々なイメージを持ってもらえます。幅広い層にアピールすることできる可能性が広がるんです。
コーポレートカラーを使う
スタバのロゴマークのイメージカラーはブラウン⇒グリーン×ブラック⇒グリーン単色と移り変わっています。コーポレートカラー(企業を象徴するカラー)であるグリーンをメインカラーに使い、それを印象付けているわけです。
あの色はあのお店。決まったカラーを繰り返し使うことで覚えてもらえます。ロゴマークはコーポレートカラーを印象付けるために最適なアイテムと言えます。
色の持つ訴求力は強烈です。だから、積極的に使っていくべきなのです。
例えば銀行なら、赤は「三菱UFJ」、青は「みずほ」、黄緑は「三井住友」、コンビニなら、白地に赤・緑・茶のストライプは「セブンイレブン」、白地に水色とピンクのストライプは「ローソン」、白地に水色と緑のストライプなら「ファミリーマート」。色のイメージが各々のサービスに完全に結びついています。
コーポレートカラーを決め、それをロゴマークに使っていきましょう。
「ロゴマークの作り方」のまとめ
今日は、スタバのロゴの変遷から、ロゴマークの作り方を考えてみました。
ロゴマークを作る時のポイントは、
- 伝えるメッセージは1つだけ(ワンメッセージ)
- シンボルをアイコン化する
- コーポレートカラーを使う
です。
ロゴマークはその会社の象徴・シンボルです。文字で説明しようとすると、どうしても野暮ったい感じになってしまいます。シンプルで直感的にイメージを伝えられるロゴマークを考えましょう!
おまけ
スタバとエクセルシオールがロゴマークを巡って裁判で争ったことがあります。
エクセルシオールが、スタバの②1987年バージョンと似たロゴマークを使っていたために、スタバから不正競争防止法違反で訴えられたのです。しかも、その時のエクセルシオールのロゴはドーナツ状部分のカラーもグリーン!
この時、エクセルシオール側がドーナツ状部分のカラーをブルーに変更することで、両社は和解しています。似たようなロゴマークでも、カラーが違えば区別が付くということですね。
それだけ、色の印象は強烈だということです。
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