先日、マッサージサービスに関する名称については商標登録を受けることができる、というお話をしました。
マッサージサービスについて商標登録を受けることはできますか? ~マッサージと知的財産(その2)~
但し、マッサージサービスに関する名称ならば、どんな名称でも商標登録を受けられるわけではありません。
いくつかの条件を満たす必要があります。
その条件の一つが「(商標の)識別力」です。
「識別力がない商標」は商標登録を受けられません。
今日は「識別力」とは何か、「識別力がない商標」とはどんな商標なのかについて、マッサージ関係の商標の事例で説明します。
「識別力」とは
「識別力」は、商標が自分の商品・サービスと他人の商品・サービスとを識別(区別して認識)させる力です。
商標は自分の商品・サービスと他人の商品・サービスとを区別して認識させることによって、その商品・サービスの出所を明らかにし、商品・サービスの質を保証します。
ですので、「識別力」は商標の本質的な機能と言えます。
「識別力のない商標」の代表例「記述的商標」
「識別力のない商標」にはいくつかの種類があります。
中でも、問題になることが多いのが、「記述的商標」と呼ばれる商標です。
「記述的商標」は、単に商品やサービスの内容を説明したにすぎない、説明的な商標です。
例えば、単に商品の産地、販売地、品質等又は役務の提供の場所、質等のみを表示する商標等を挙げることができます(*2)。
記述的商標をはじめとする「識別力のない商標」は、商標としての本質的な機能を欠いていて、商標として機能しないため、たとえ出願しても商標登録されることはありません。
「記述的商標」は誰もが使いたい一般的な表示なので、誰か一人に独占させてしまうと同業者が困ってしまいます。
ですので、誰が出願しても商標登録を認めず、必要な人がその表示を自由に使えるように空けてあるわけです。
「識別力がない商標」の登録が無効とされたケース
かつて、「インディアンヘッドマッサージ」という文字商標が登録されていました。
商標登録:第4647299号(平成14年3月13日出願、平成15年2月21日登録)
商標:「インディアンヘッドマッサージ」
指定役務(サービス):第44類「あん摩・マッサージ及び指圧」
しかし、この商標については、本来、商標登録されべきものではなかったとして、商標登録を無効とされ、商標権が消滅しています。
商標審決公報(無効2005-89060)|商標審決データベース
審決では、
「ヘッドマッサージ」の文字は、…「頭部へのマッサージ」を意味するものとして普通に使用されているものである
「ヘッドマッサージ」の文字に「インディアン」の文字を冠した本件商標は、「インド式ヘッドマッサージ」といわれるマッサージの施術方法(技法)を指称するものであって…
このマッサージの施術方法(技法)は、…あん摩・マッサージ及び指圧を役務とする専門店、専門学校の教育(講座)などで本件商標の登録査定時以前から広く使用(実施)されている実情にあることが認められる
等の根拠を示した上で、
「インディアンヘッドマッサージ」の文字を標準文字で表してなる本件商標は、これをその指定役務中「インド式ヘッドマッサージ」に使用したときは、単にその役務の質を表示したにすぎない
したがって、本件商標は、…その登録を無効にすべきものである。
と判断しました。
文字商標「インディアンヘッドマッサージ」は、そのサービスの内容を示しているにすぎない「記述的商標」であり、「識別力がない商標」である、と判断されたわけです。
まとめ
以上説明したように「識別力がない商標」については出願しても商標登録されることはありません。
その一方で、サービスの内容を一発で伝えることができるため、「商標登録できませんか?」という相談が多いのも事実です。
商標登録を検討する際には、使いたい名称そのものがインターネット上にあるか、ざっと検索してみてもよいでしょう。
それだけで判断できるわけではありませんが、目安にはなります。
そのものズバリの名称がインターネット上で多数発見されるようだと、「識別力がない」と判断される可能性が高いです。
そのような場合は、弁理士に相談して判断を仰いでみてください!
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