クロスリンク特許事務所(銀座・東銀座・新橋)・弁理士のヤマダ(@sweetsbenrishi)です。
はじめに
「ポケモンGO」の対応機器である「ポケモンGOプラス」の改造品を販売していた会社員が商標法違反の疑いで逮捕されました。
「なんで『ポケモンGOプラス』の改造品を売ると商標法違反になるの?」と思った方もいるかもしれませんね。ちょっと解説します!
「ポケモンGO」、「ポケモンGOプラス」について
ヤマダは未だ「ポケモンGO」をプレイしたことがありません(恥)
そういう方のために、まずは「ポケモンGO」と「ポケモンGOプラス」の紹介から。
「ポケモンGO」は、いわゆるスマホゲームです(*1)。スマホのGPS機能を使って、ポケットモンスター(ポケモン)のキャラクターを捕まえるゲームですね。
「ポケモンGOプラス」は、「ポケモンGO」の対応機器・周辺機器です(*2)。腕時計型のデバイスで、近くにポケモンが現れると振動したり、ランプが点滅してポケモンが近くにいることを知らせてくれます。
何故、「ポケモンGOプラス」の改造品を販売すると商標法違反になるのか?
逮捕された会社員は、「ポケモンGOプラス」に自動でポケモンを捕まえる改造を加えた改造品をネット販売したことを理由に商標法違反の疑いで逮捕されました。
中には「何で『ポケモンGOプラス』を改造すると、商標法違反になるの?」と思った方もいるかもしれませんね。
改造したからというよりは、「任天堂」のロゴマーク(商標)を残したまま、「ポケモンGOプラス」を改造し、その改造品を販売したことが商標法に違反するのです。
ベースとなっているのは、任天堂の「ポケモンGOプラス」です。しかし、その改造品はもはや任天堂の商品とは言えません。任天堂の商品ではないものに、任天堂のロゴマークを付けて売ったことが問題なのです。
第三者が登録商標である任天堂のロゴマークを、任天堂が指定した商品やサービスについて使用することは任天堂の商標権の侵害であり、商標法に違反する行為となるわけです。
各社の報道を見ると、この辺りの説明が不十分です。一般の方には内容がわかりにくかったかもしれません。
商標の4つの機能と商標権侵害の関係
どんな行為が商標権の侵害となるかは、商標の機能が深く関わっています。
商標には、以下の4つの大事な機能があります。
● 自他商品・役務識別機能(他の会社の商品・サービスと、自分の商品・サービスとを違うものであると認識させる)
● 出所表示機能(誰が作った商品・誰が提供しているサービスかを表す)
● 品質・質保証機能(その商標が付いている商品の品質、サービスの質を保証する)
● 宣伝広告機能(商標を広告に使用し、記憶させ、購買意欲をかきたてる)
これらの大事な機能を害するような行為は商標権侵害になると考えてよいでしょう。
4つの機能の中でも最も大事な機能が、「品質・質保証機能」です。
購入者は同じ商標が付いている商品であれば当然同じ品質だと認識します。その品質を期待して商品を買ったのに、全く違うものだったと言うことになると購入者の期待を裏切ることになってしまい、商標を付けている意味がなくなるからです。
偽ブランド品などはこの典型ですよね。例えば、ルイ・ヴィトンのロゴマークが付いたバッグを買ったのに、バッタ物だったらがっかりしますよね。
今回の事件のように、改造品に元の商品の登録商標を付けたまま販売する行為も、品質・質保証機能を害する行為の典型例です。
商標を付けるというのはその商品の品質を保証することですから、その商品に商標が付けられた段階と同じ品質が維持されたまま購入者に届かなければいけません。流通の過程で商標が付いた商品に手を加えてはいけないのです。
過去の裁判では、業務用の大袋入りの商品を小分けし、製造元の登録商標を付けて販売する行為は商標権侵害であるという判断がされています(ココア、オイルトリートメント、肥料などについての裁判例があります)。
小分けをすると、ゴミが混ざったり、商品が空気や湿気に触れて品質が低下する可能性もありますよね。だから、たとえ小分けでもダメなんです。
まとめ
● 他社の登録商標を残したまま、その改造品を販売することは商標法に違反する
● 商標の4つの機能の中で最も大事な機能は「品質・質保証機能」
● 流通の過程で登録商標が付いた商品に手を加えてはいけない(小分けもダメ)
参考サイト
(*1)『Pokémon GO』の遊び方|『Pokémon GO』公式サイト
(*2)Pokémon GO Plus|『Pokémon GO』公式サイト
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