ネーミングを作成した舞台裏を紹介し、これからネーミングに取り組む方に参考にしてもらおう。そんな意図で「ネーミング作成の裏側、全部見せます!」という記事を執筆しました。今回から3回シリーズでお届けします。第1回はフリーアナウンサー・喜多村明子さんが主催する勉強会の名称「ほんとうの話し上手」についてです。
ネーミング作成ご依頼 喜多村 明子さんについて
喜多村さんはフリーアナウンサーで、話し方コーチや研修講師も務めています。トーク、人前で話すことのスペシャリストと言っていいでしょう。書籍「リピート率90%を引き寄せる 選ばれるためのコミュニケーションの極意」(ギャラクシーブックス)も出版されています。
その喜多村さんが自分で培ってきたノウハウを惜しみなく投入し、受講生に対し、話し方やコミュニケーションを伝えている勉強会があります。在り方、話し方、コミュニケーションを総合的にスキルアップし、「選ばれる人」を実現するためのオンライン勉強会です。この勉強会の名称が今回のネーミング作成の対象です。
ネーミングの現状分析
喜多村さんはご自身の勉強会を「話し方の真実」という名前で運営していました。この名前に関し、喜多村さんは、
まぁまぁ気にいっていますが、これで内容が伝わるかな?という心配が少し。もっとわかりやすく伝わるネーミングがあれば。
とコメントしていました。
この「まぁまぁ気に入っていますが…」というコメントですよ。ここから伝わるのは、この名前に今ひとつ腹落ちしていないんだろうなということ。そうであれば、もっと良いネーミングがあるはずです。
喜多村さんは、ご自身の勉強会と競合する商品やサービスについて、
話し方教室、アナウンサー養成講座、朗読講座……あたりでしょうか
ご自身の勉強会の強みについて、
ムダなことがきらいな私は、形式的なことはやりません。本当にスキルアップになる実践的なことのみ
私からの一方通行ではなく、皆さんからの質問やリクエストを随時受け付け、コンテンツにしています
一人一人に合わせたトークスキルのレッスンを行っています
とコメントしています。
これらのコメントを見ると、市民講座の話し方教室などが予め作られたコンテンツ・講義内容を一方的に伝えるのに対し、喜多村さんの勉強会は、
- 親しみやすさ(喜多村さんとメンバーとの距離感が近い)
- 双方向性(講師側から一方向的に講義をするのではない)
- カスタマイズ性(メンバー個々の特徴に合わせたコンテンツを提供している)
などが特徴になっていると考えられます。
ネーミング作成
さて、今まで、勉強会の名前は「話し方の真実」でした。喜多村さんは「まぁまぁ気にいっている」と言っていましたが、私はかなり違和感を感じたんですよねぇ。正直なところ…。
「話し方の真実」。書籍のタイトル? 専門家のパネルディスカッション? 何より硬く、冷たい印象を受けます。
私は何度か喜多村さんにお会いしたことがありますが、決して専門家然とした人ではなく、とてもフレンドリーな方です。この名前の持つイメージは、喜多村さんのイメージ、喜多村さんが勉強会で目指している親しみやすさ、双方向性、カスタマイズ性とは明らかにミスマッチだと感じました。これが喜多村さんが表現したいものと、名前から生ずるイメージとの「ズレ」です。
そうであれば、この「ズレ」を解消し、名前の方を本来のイメージに近づければいいはずだ、ということになります。
私がネーミングの際に意識したのは、
- ソフトな言葉を使う
- 人前で話すことに苦手意識を持っている人の興味や関心をくすぐる
- 単に話し方のノウハウを教える勉強会ではないことをイメージさせる
でした。
そのような考えの下、作ったネーミングが「ほんとうの話し上手」です。
安積さんに素敵なイラストも作って頂きました。
「話し方の真実」との違いがわかりますか?
「ほんとう」と「真実」はほぼ同じ意味です。でも、ひらがなにしたこともあって印象はかなり柔らかくなりました。「ほんとう」、「ホント」、「本当」、そして「真実」。並べてみると、印象の違いがわかると思います。
また、「ほんとう」は「話し方」(方法)ではなく、「話し上手」(人)に結びついています。話すのが苦手だと思っている人は話し上手な人に対して、ある種の憧れを持っていると思います。話し上手な人はどんな話し方をするのだろう?という興味もあるはずです。ここで、勉強会に対する興味や関心をくすぐるわけです。
そして、「話し方」ではなく、「話し上手」にフォーカスを当てることによって、この勉強会は「話し方(方法・メソッド・ノウハウ)」を伝える勉強会ではないよ、というニュアンスも含ませてあります。
こんなプロセスを経て、喜多村さんにプレゼントするネーミング「ほんとうの話し上手」ができあがりました。
依頼者・喜多村さんのご感想
喜多村さんからは次のようなコメントを頂きました。
第一印象で「あ、いいな。素敵だな」と思いました
真実という言葉のパワーも強いですね。まじめすぎるというか。
ちょっと距離をつくってしまうかもしれません
そして、「ほんとうの」を「話し上手(人)」に紐付けたという点については、
これは、うなりました!
学びたい方は、方法を知りたいというより、自分が話し上手になりたいんですよね。自分ごとになりやすいと思います
そして、最後に、
「話し方の真実」も、まぁまぁ気に入ってはいましたが、100点満点というわけではありませんでした。
「ほんとうの話し上手」の方が親近感もわきますし、「私も話し上手になりたい、なれるかも」と自分ごととして期待を持ってもらえそうに思います
というご感想も頂きました。
喜多村さんはSNSのLinkedIn(リンクトイン)にも喜びの声を投稿してくれました。
「ほんとうの」がお気に召されたようです(笑)
喜多村さん。喜んでもらえてホッとしています。
「ほんとうの話し上手」を気に入ってもらえたのであれば、ぜひ使い倒してやってください。このネーミングが、人前で話すことに苦手意識を持っている多くの人に、喜多村さんの勉強会のことを知ってもらうきっかけになれば嬉しいです。
今日のまとめ
「ネーミング作成の裏側、全部見せます!」の第1回、いかがでしたか?
ネーミングはクリエイターにしかできないものではありません。極めてロジカルな考え方に基づいています。そして、ネーミングはブランディングの第一歩です。ネーミングに目を背けたままでは到底、ブランディングなどできません。
もし、この記事を読んで、「本気でネーミングに取り組んでみよう!」と思った方は、ぜひヤマダまでご相談ください。専門的知識を持った第三者の客観的な視点を入れることで、自分本位のネーミングから脱することができますよ。
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