商標登録の区分(商品・役務の区分)・第43類には飲食物の提供;宿泊施設の提供;に関するサービスが含まれます。
他にも、会議室の貸与 展示施設の貸与;などのサービスが含まれています。
この記事では、商標登録の区分・第43類の役務(サービス)について解説します。
商標登録の申請書類には、
- 商標登録を受けようとする商標(商品のネーミングや会社のロゴマーク)
- その商標を使いたいたい商品・役務(サービス)
- その商品・役務(サービス)の区分
を記載する必要があります。
「区分」は全ての商品・サービスを第1類から第45類までの45個のグループに分類したものです。区分の記載に誤りがあると、特許庁手数料が余計にかかったり、商標登録の申請が拒絶されたりするので、商標登録をしたい人は区分について理解しておく必要があります。
区分には45個もグループ(類)があります。第45類の内容を確認する前に、第1類から第45類までの区分全体をざっと俯瞰してみることをオススメします。
まずは、商標登録の全区分(第1類から第45類まで)を弁理士が解説!という記事から読んでみてください。
第43類「飲食物の提供及び宿泊施設の提供」について
商標登録の区分「第43類」には、
- 飲食物の提供
- 宿泊施設の提供
に関するサービスが含まれます。
類似商品・役務審査基準によれば、第43類について、
主として、消費のための飲食物の用意に関連して提供されるサービス及び一時宿泊施設を提供するサービスを含む。
類似商品・役務審査基準〔国際分類第12-2023版対応〕
と記載されています。
第43類に含まれるサービスの具体例
商標登録の区分 第43類には、例えば、
- 宿泊施設の提供(類似群コード:42A01)
- 飲食物の提供(類似群コード:42B01)
- 会議室の貸与 展示施設の貸与(類似群コード:42X10)
などのサービスが含まれます。
宿泊施設の提供(類似群コード:42A01)
ホテル、旅館等の宿泊施設を一時的に利用させるサービスです。
例えば、
- ホテル・民宿
- 民泊事業者
- キャンプ場運営者
などが提供するサービスが該当します。
類似群コード「42A01」に属するサービスを指定している商標登録の例
- ザ・リッツ・カールトン(商標登録5031381)
- 星野リゾート(商標登録5760347)
- AIRBNB(商標登録5478556)
- よつばのゲストハウス(商標登録6134980)
「宿泊施設」に「民泊施設」は含まれるが、「ペットホテル」は含まれない
「宿泊施設の提供」における「宿泊施設」は大小を問いません。真っ先に思い浮かぶのはホテルですが、それだけではなく、民宿やユースホステル、ゲストハウス、キャンプ場など小規模の宿泊施設も含まれます。
事例に挙げた、「AIRBNB(エアービーアンドビー)」や「よつばのゲストハウス」などの民泊事業も「宿泊施設の提供」を指定して商標登録を行っています。
ただし、ペットホテルのような「動物の宿泊施設の提供」は同じ第43類に属するサービスであるものの、別の類似群コード(42V04)が付けられています。すなわち、「宿泊施設の提供」というサービスに「動物の宿泊施設の提供」は含まれていないため、「動物の宿泊施設の提供」は「宿泊施設の提供」とは別のサービスとして出願書類に記載する必要があるということです。
飲食物の提供(類似群コード:42B01)
料理や飲料を飲食させるサービスです。
例えば、
- 食堂
- レストラン
- そば・うどん店
- すし店
- 喫茶店
- 料亭
- バー、キャバレー、ナイトクラブ
- 酒場、ビヤホール
など飲食事業者が提供するサービスが該当します。
類似商品・役務審査基準には、この類似群コードに属するサービスの更に細かい分類も記載されています。
例えば、
- 日本料理を主とする飲食物の提供
- 西洋料理を主とする飲食物の提供
- 中華料理その他の東洋料理を主とする飲食物の提供
- アルコール飲料を主とする飲食物の提供
- 茶・コーヒー・ココア・清涼飲料又は果実飲料を主とする飲食物の提供
などのサービスも例示されています。
類似群コード「42B01」に属するサービスを指定している商標登録の例
- 吉野家(商標登録3146448)
- スターバックス(商標登録3111382)
- 磯丸水産(商標登録5251516)
※「吉野家」、「マクドナルド」の商標登録は旧法による分類のため、区分が「第42類」となっています。
「飲食物の提供」は「イートイン」のサービス。「テイクアウト」の商品は「商品」として指定する
第43類に含まれる「飲食物の提供」はいわゆる「イートイン」のサービスを指します。
その場で提供され、消費される料理は「商品」とは認められず、出願の際に「商品」として指定することができません。そのため、「サービス」として指定するのです。
「テイクアウト」で提供する料理は「商品」として認められますので、各々の商品の区分で指定します。例えば、「モスバーガー」(商標登録5408139)では、第43類「飲食物の提供」の他、第30類「ハンバーガー」、「ホットドッグ」、第32類「シェーク」、「果実飲料」なども指定しています。
「イートイン」だけではなく、「テイクアウト」のサービスも行う場合には、「テイクアウト」で提供する商品を指定する必要がないか検討する必要があります。食品関係の商品は第29類から第33類に含まれています。
会議室の貸与 展示施設の貸与(類似群コード:42X10)
会議室や展示施設等、特定の用途に限定されない場所及び空間を一時的に貸与するサービスです。
例えば、
- 貸会議室の運営会社
- 展示場の管理運営会社
- レンタルスペース業者
などが提供するサービスが該当します。
類似群コード「42X10」に属するサービスを指定している商標登録の例
- 東京ビッグサイト(商標 登録4053939)
- 幕張メッセ(商標登録3017170)
- TKP(商標登録5613881)
「会議室の貸与 展示施設の貸与」は一時的な貸与に限られる
「会議室の貸与 展示施設の貸与」は「特定の用途に限定されない場所及び空間を一時的に貸与するサービス」と解釈されています。長期的な賃貸契約を結ぶ形態のものは含まれません。
長期的な賃貸契約を結んで貸し出すサービスは、例えば、第36類の「建物の貸与」や「土地の貸与」を指定した方がよいでしょう。
第43類に含まれるサービスの一覧リスト
第43類に含まれるサービスを一覧リストにして示します。
以下の点に注意して、リストを眺めてみてください。
- このリストに記載されたサービスをまず押える(特許庁の「類似商品・役務審査基準」で枠囲いされている、メインのサービス)
- 「類似群コード」が同じだと、「類似するサービス」と判断される
- 自分が商標登録を申請する商標が、先に出願・登録されている商標と似た商標で、かつ、「類似群コード」が同じサービスを指定している場合は審査で拒絶理由が来る可能性が高い
【第43類】飲食物の提供及び宿泊施設の提供
No. | 類似群コード | 商品・役務名 |
---|---|---|
1 | 42A01 | 宿泊施設の提供 |
2 | 42A02 | 宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ |
3 | 42B01 | 飲食物の提供 |
4 | 42V04 | 動物の宿泊施設の提供 |
5 | 42W01 | 保育所における乳幼児の保育 |
6 | 42W02 | 高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。) |
7 | 42X10 | 会議室の貸与 |
8 | 42X10 | 展示施設の貸与 |
9 | 42X12 | 布団の貸与 |
10 | 42X12 | まくらの貸与 |
11 | 42X12 | 毛布の貸与 |
12 | 42X13 | 家庭用電気式ホットプレートの貸与 |
13 | 42X13 | 家庭用電気トースターの貸与 |
14 | 42X13 | 家庭用電子レンジの貸与 |
15 | 42X24 | 業務用加熱調理機械器具の貸与 |
16 | 42X24 | 業務用調理台の貸与 |
17 | 42X24 | 業務用流し台の貸与 |
18 | 42X27 | 家庭用加熱器(電気式のものを除く。)の貸与 |
19 | 42X27 | 家庭用調理台の貸与 |
20 | 42X27 | 家庭用流し台の貸与 |
21 | 42X27 | 食器の貸与 |
22 | 42X28 | カーテンの貸与 |
23 | 42X28 | 家具の貸与 |
24 | 42X28 | 壁掛けの貸与 |
25 | 42X28 | 敷物の貸与 |
26 | 42X29 | おしぼりの貸与 |
27 | 42X29 | タオルの貸与 |
「商標登録の区分・第43類」のまとめ
商標登録の区分・第43類について解説しました。
第43類には、
- 飲食物の提供
- 宿泊施設の提供
に関するサービスが含まれます。
具体的には、
- 宿泊施設の提供(類似群コード:42A01)
- 飲食物の提供(類似群コード:42B01)
- 会議室の貸与 展示施設の貸与(類似群コード:42X10)
などのサービスが含まれています。
これらのサービスに関わる
- ホテル・民宿、民泊、キャンプ場等の宿泊事業者
- 食堂、レストラン、喫茶店、バー等の飲食事業者
- 貸会議室の運営会社;展示場の管理運営会社;レンタルスペース業者
の方にはチェックして欲しい区分です。
商標登録を検討する際はぜひ第43類のサービスをご検討ください。
参考資料
このページは特許庁の公開情報を基に作成しています。参考にした資料は以下のとおりです。
商品・役務の分類に関する情報|特許庁
※「商品及び役務の区分解説」の「国際分類第12-2023版対応」版はまだ公開されていません(2023.3.16現在)。
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