ピコ太郎とは全く無関係の会社が商標「PPAP」を出願している件(その1)

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はじめに

最近、自分の意にそぐわないものを自分の感情だけで袋叩きにしている光景をよく見かけます。Bッキーちゃんの件とかね(苦笑)

知的財産の世界でもそうです。オリンピックロゴの問題もしかり、「鳥貴族」と「鳥二郎」の問題もしかり…。人それぞれ、考え方は違うでしょう。でも、やっぱりきちんとした物差しを当てて物事を判断するようにしないとね。

今日は、巷を騒がせている、第三者による「PPAP」商標の出願問題について書いてみました。 

事件の概略(この事件をまだ知らない人へ)

昨年の新語・流行語大賞のトップテンにも選ばれた、ピコ太郎の「PPAP(ペン・パイナッポー・アッポー・ペン)」。この「PPAP」について、ピコ太郎とは全く無関係の会社(「B社」とします)が商標登録出願をしていることが判明しました。

netgeekによると、このB社の代表(「U氏」とします)は、

「あくまで権利は自分にあるのでピコ太郎が許可なくPPAPを歌うと損害賠償請求の対象になる」

「PPAPの商標権を横取りした元弁理士の上田育弘、『歌いたければ金払え』」|netgeek

と主張しているそうで、「ピコ太郎の運命やいかに!」と世間の注目を集めているのです。

商標法には「パクリ出願」を排除する規定がない

普通の感覚では、「他人のものを勝手に出願したらダメだろー!」と思うわけですが、事はそう単純ではありません。商標法には「パクリ出願」を排除する規定がないからです。

● 特許の対象である「発明」
● 実用新案登録の対象である「考案」
● 意匠登録の対象である「意匠」

これらは「創作物」と言われていて、(特許・ 登録にならなくても)創り出したこと自体に一定の価値があると考えられています。このため、創作物が完成した時点で(出願する前の段階で)、「特許(or 登録)を受ける権利」という権利を発生させて、創作者を保護しています。そして、第三者が他人の創作物を勝手に出願した場合、その出願が「パクリ出願(冒認出願)」であることを理由に特許(or 登録)を受けられない仕組みになっています。

一方、商標登録の対象である「商標」はどうかというと、「創作物」ではなく「選択物」と言われています。
商標法においては、ブランディングのプロが考えたネーミングも、腕利きのデザイナーが創ったロゴマークも「どこかから選んできたもの」という扱いで、残念ながらそれを創り出したこと自体に対する価値は認められていません。このため、商標法には「商標登録を受ける権利」という権利は規定されておらず、ネーミングやロゴマークを商標として出願しなければ、創った人が保護されない仕組みになっています。

商標法には、ネーミングやロゴマークを商標として出願する前に第三者に勝手に出願されてしまったら、その第三者の出願を「パクリ出願(冒認出願)」として排除する規定がないということです。このため、商標の世界は、特許、実用新案、意匠の世界以上に「早い者勝ち」の色彩が強くなります。

今回のケースでは、ピコ太郎の所属するエイベックスが「PPAP」を出願したのが2016年10月14日。これに対し、B社が「PPAP」を出願したのは2016年10月5日。エイベックスに9日先んじています。

だから「早い者勝ち」という面だけを見るならば、「早く出願しないエイベックスが悪い」というU氏の言い分も一理あるわけです。

まとめ

今日はここまで! この事件は突っ込みどころが満載なので、もうちょっと掘り下げていきます。

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